発表要旨一覧

英語教育研究法セミナー / シンポジウム / 問 題別討論会 / 課題研究プロジェクト /  自由研究発表(1日目) / 自由研究発表(2日目) / ポスターセッション

英語教育研究法セミナー

 本セミナーは、英語教育に関する研究をこれから始めようとする方や、既に研究を行っているものの、課題設定の仕方や研究手法等に自信 の持てない方を主な対象に、研究を行う上で注意すべき点や取るべき手段など、特に研究方法に焦点を当てて提案、議論することを目的とする。また、既に英語 教育研究を数多く行ってこられた方々にもぜひご参加いただき、活発な意見交換、質疑応答を期待したい。セミナー1は過去3年間のセミナーと基本的に同内容 の発表を、セミナー2は昨年度のものに新しいテーマも加え、発展的な内容としたい。発表内容および発表順は次の通り:

セミナーI:28日(土)10:30~11:30 (F-101) (セミナー1は過去3年間のものと基本的に同内容。)
  (1)「よい研究」の条件と種類 (浦野 研)
  (2)研究論文の書き方・まとめ方 (田中 武夫)

セミナーII:29日(日)11:45~12:40(昼食と共にお聞きください) (セミナー2は2会場で同時進行。
  セミナー2A 論文の体裁を整える: APA Style Manualを活用して (浦野 研) (F-102)
  セミナー2B 研究デザインの方法: 量的アプローチと質的アプローチ (F-103)
    (1)量的アプローチ (本田 勝久)
    (2)質的アプローチ (髙木 亜希子)

セミナー1(1).「よい研究」の条件と種類
浦野 研(北海学園大学)

英語教育に関わる研究を行うとき、まずはその研究を何のために行うのかを明確にする必要がある。その上で、その目的を達成するために適 切な研究課題を設定し、さらにその課題に対して適切な研究手法を選択、決定することが重要である。本発表では、特に実証研究(何らかのデータ・情報を集め ることによって研究課題に対して答えを導き出す研究)を中心に取り上げ、英語教育研究の文脈における「よい研究」の条件について具体例を交えながら提案す る。同時に、研究の種類として考えられる主な手法を紹介し、研究立案の段階で研究課題にふさわしい研究手法の選び方についても議論したい。

セミナー1(2).研究論文の書き方・まとめ方
田中 武夫(山梨大学)

どのような研究であれ、最終的には研究論文の形にまとめることになる。この論文作成は、研究プロセスの最終段階とも言え、内容が優れた 研究であっても最終段階の論文作成がまずければ良い研究にはならない。本発表では、英語教育に関する研究論文をどのようにまとめればよいのか、どのように 研究論文を書くべきなのか基本的な事柄についてポイントを提示する。具体的には、(1) 研究論文によくあるケースにはどのようなものがあるのか、(2) 良い研究論文の規準とはどのようなものか、(3) 良い研究論文の構成とはどのようなものか、(4) 読者にとって読みやすい論文をどのようにして書けばよいのか、について、これまでの個人の経験や大学院等での指導経験をもとに、自分の反省をも含めて提示 することにする。

セミナー2A 論文の体裁を整える: APA Style Manualを活用して
浦野 研(北海学園大学)

本学会の紀要に論文を投稿する際には、引用文献欄の書式をAPA Style Manualの最新版(以下 APA マニュアル)の指示に従ったものにする必要がある。APAマニュアルというと、引用文献欄の書き方の参考書のように考える方もいるかもしれないが、実はそ れ以外にも、論文執筆の様々な側面における詳細かつ有用なアドバイスが多く掲載されている。

そこで今回は、APAマニュアルの中から、論文の構成(章立て)の仕方、引用の仕方、図表の描き方、統計情報の掲載の仕方、タイトルの つけ方など、研究論文を執筆する中で特に知っておいていただきたい内容を中心に紹介する。すでに論文を執筆されてきた方にとっては、自分のこれまでのやり 方を振り返る機会に、これから研究論文を執筆される方には何らかのガイドラインとなれば幸いである。

セミナー2B 研究デザインの方法: 量的アプローチと質的アプローチ
  (1)量的アプローチ (本田 勝久)
  (2)質的アプローチ (髙木 亜希子)

英語教育に関する研究を行うとき、研究者は、まずどのような理論的視点に立ち、研究を行うか明確にした上で、研究計画を立て、目的に 合った研究手法を選択することが必要である。研究者が、実証主義的な(positivist)視点に立てば、客観性、予測、反復可能性を重視し、科学的一 般化や現象を説明する法則を明らかにすることが目的となる。そのためには、実験研究や質問紙調査などの方法論(methodology)を選択し、測定や 選択式質問紙などの量的手法(method)でデータを収集して、統計的な分析を行うことになるだろう。また、解釈的な(interpretive)視点 に立てば、現実に存在する人間の経験、思想や感情を、十分に理解しようとすることが目的になる。そのためには、現象学的研究、エスノグラフィ、グラウン デッド・セオリーなどの方法論を選択し、面接、記述式質問紙や参与観察法などの質的手法でデータを収集して、質的な分析をすることになるだろう。

本発表では、まず理論的視点を概観した後、具体的な研究テーマを例として、それぞれの視点から研究を行う場合の研究デザインの方法につ いて提示する。具体的には、(1)リサーチ・クエスチョンの設定、(2)データ収集の方法、(3)データ分析の方法、(4)研究の評価に関して、質的アプ ローチと質的アプローチで比較しながら、それぞれ提示する。前半の量的アプローチは本田が担当し、後半の質的アプローチは髙木が担当する。量的・質的アプ ローチを比較・分析することで、研究課題に沿った研究デザインのあり方を議論したい。

シンポジウム:新学習指導要領を考える 28日(土) 15:35~18:00 (F-301)

司会者: 大下 邦幸(福井大学)・渡邉 時夫(清泉女学院大学)
提案者: 松本 茂(立教大学)・諏訪部 真(清泉女学院短期大学)・三浦 孝(静岡大学)

2008年(平成20年)3月28日に次期の小学校学習指導要領、中学校学習指導要領が告示された。この学習指導要領によれば、小学校では5・6年 生に「外国語活動」の授業を実施することが明記され、中学校学習指導要領においても、聞く・話すへの重点を改め、聞く・話す・読む・書くの4技能を総合的 に行う学習活動を充実させること、指導すべき単語を「900語程度まで」から「1200語程度」に増やすことなど、これまでにない大きな改変を含んでい る。また本年度秋に告示される予定の高等学校指導要領においても、現行の科目構成の見直しが行われるなど、日本の英語教育の枠組みも含め、英語教育の質自 体が大きく変わろうとしているように思われる。

本シンポジウムでは、新学習指導要領告示の時期を捉え、特に中学校、高等学校の新学習指導要 領の内容を詳しく分析するとともに、今後の英語教育の進むべき方向についても考えたい。そこでパネリストには、現行の中学校学習指導要領の指導書の執筆に 携われた諏訪部先生、学習指導要領の改善を検討してきた中教審外国語専門部会のメンバーの松本先生、学校現場での教育実践に詳しい三浦先生をお招きし、そ れぞれのお立場から新学習指導要領を読み解いていただくことにする。

新学習指導要領を考える
諏訪部 真(前清泉女学院短期大学)

1. 教育課程(基準カリキュラム)の構成 (中学校学習指導要領第5回改定、外国語)の場合
 (1) 学校教育法施行規則(53条、54条、54条の2)
 (2) 中学校学習指導要領第1章総則および第9節外国語 英語
 (3) 中学校生徒指導要録
 (4) 中学校指導書外国語編 第6回改定より → 「解説」

2. 学習指導要領(英語編・外国語編)の変遷を見る 

中学校
 (1) 学習指導要領英語編(試案)        昭和22年(1947)    公示(小・中) 
 (2) 学習指導要領外国語科英語編第1回改訂 同26年(1951)      公示(中・高) 
 (3) 学習指導要領外国語 第2回改訂     同33年(1958)      公示(中)
 (4) 学習指導要領外国語 第3回改訂     同44年(1969)      公示(中)
 (5) 学習指導要領外国語 第4回改訂     同52年(1977)      公示(中)
 (6) 学習指導要領外国語 第5回改訂     平成元年(1989)      公示(中)
 (7) 学習指導要領外国語 第6回改訂     同10年(1998)      公示(中)
 (8) 学習指導要領外国語 第7回改訂     同20年(2008)      公示(中)

高等学校
 (2) 学習指導要領外国語  第1回改訂     同26年(1951)      公示(中・高)
 (3) 学習指導要領外国語 第2回改訂     同31年(1956)      公示(高)
 (4) 学習指導要領外国語 第3回改訂     同35年(1960)      公示(高)
 (5) 学習指導要領外国語 第4回改訂     同45年(1970)      公示(高)
 (6) 学習指導要領外国語 第5回改訂     同53年(1978)      公示(高)
 (7) 学習指導要領外国語 第6回改訂     平成元年 (1989)      公示(高)
 (8) 学習指導要領外国語 第7回改訂     同10年(1998)      公示(高)
 (9) 学習指導要領外国語 第8回改訂     同20年(2008)      公示(高)

小学校
 小学校学習指導要領 第4章 外国後活動    平成20年         公示 (小)

3. 英語授業時数(中学)                     
 昭和22年 週5~6時間 
 昭和26年 週5~6時間 
 昭和33年 週3~5時間
 昭和44年 週3時間 
 平成元年 週3+a時間 
 平成10年 週3+選択時間 
 平成20年 週4時間

4. 学習指導要領への対処―カリキュラム/シラバスの作成

新学習指導新学習指導要領でどんな授業ができるか・できないか
三浦 孝(静岡大学)

新 中学校外国語学習指導要領(2008年3月)は、英語の授業時間の増加、新出語の増加、4技能の統合性の強調、creativeな発話の奨励、コミュニ ケーションを支えるものとしての文法の位置づけ等において、評価できる点が多く、英語教育学から見ても理にかなった内容となっていると思う。問題は、指導 要領が提示したこれだけの注文に、学校がシラバス(年間指導計画)でどう応えられるかであろう。

学習指導要領を言語教育シラバスとして吟味 した時、シラバスが備えるべき重要な要素中の2つを欠いていることは承知しておかねばならない。その点では、今回の指導要領も以前のものと共通している。 欠落している要素とは、①教科の目標を達成するための中間目標(教授上の目標とも呼ぶ)の欠如、②どういうアクティビティーを用いて教えたらよいかという 指導プロセスの展望の欠如、である。もちろん、学習指導要領はシラバスとして発表されたものではない。ゆえにこの2つの要素を学習指導要領が含むべきかど うかについては議論が分かれるところだ。

高等学校における英語教育の近未来を考える
松本 茂(立教大学) 

1999 年12月に発行された『高等学校学習指導要領解説 外国語編 英語編』(文部省)を執筆した経験、本年1月まで中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会外国語専門部会において専門委員として議論した内容、そし てSELHi企画評価委員として全国の高校現場で見聞きしていること等を踏まえ、高等学校外国語(英語)の科目編成が大幅に改訂になった主旨と各科目のね らい等を検討し、現場にどのような変化が求められているのかについて考える。また、期待されている変化を現実のものにするためには、今秋に告知されるとい う高等学校の新学習指導要領に、どのようなことを盛り込むべきなのかということについて、私見を述べたい。

問題別討論会 29日(日) 12:45~14:45

第1会場:Improving Senior High School Students' Abilities to Express Themselves in English (in English)

司会者: 早瀬 光秋(三重大学)
提案者: 矢澤 徳夫(長野県立上田染谷丘高等学校)・稲原 祐子(富山県立富山東高等学校)・平山 欣孝(三重県立久居高等学校)

Improving Senior High School Students' Abilities to Express Themselves in English
早瀬 光秋(三重大学)

There are two aspects to language: production and reception. Production encompasses speaking and writing while reception encompasses listening and reading. In today's discussion, we will focus on production elaborating particularly on the instruction of language form (grammar, vocabulary, and pronunciation), how communication takes place, specific activities to improve productive skills, and the content or meaning conveyed in production. We will demonstrate that while language form can be taught independently, it can also be learned in communication activities. We will also examine how meaning is created in speaking and writing. We believe that a combination of activities involving writing and speaking can contribute to the creation of meaning.

The use of presentation strategies for making your class more task-based
矢澤 徳夫(長野県立上田染谷丘高等学校)

I have been involved in coordinating the Nagano English Club League Annual High School English Debate Contest for the past 15 years as an active board member. Also, I have been enthusiastically working on starting up a "Research and Presentation" project (in Japanese) at three different senior high schools. Through these experiences, I have come to have a strong belief in teaching debating and presentation as the most effective methodology to cultivate and develop our students' communication skill and ability. Debate and presentation are truly 'task-based' activities, which give students authentic reasons for using English (and Japanese) for practical purposes. Since debate is a form of presentation, I recommend you introduce forms of presentation to your language classes, to your integrated learning period, or to your extra-curricular activities. It is a good first step to orient your class towards more communicative activities, where they can start to learn to express their own views and eventually debate them in English. For the first part of my presentation, I would like to refer to my personal view points and experience in teaching presentation and debate.

Second, I would like to discuss the importance of concentrating on the actual presentation of the lesson, how to plan for it and how to critically analyze your own lesson. When you give a presentation generally, you consider three major aspects: physical, story, and visual impact. Physical messages include those from your posture, eye contact, gestures and voice inflection. The story refers to the basic speech structure of 'introduction, body and conclusion'. Visual impact implies how you use and show visual aids to help your presentation be more appealing and persuasive. If you become more aware and more informed of these presentation strategies, you can instruct your students more effectively, and the students will also learn more comfortably. A good lesson emanates from good presentation skills. In my presentation today, I would like to demonstrate how visual aids can be used more frequently and effectively. I hope this simple strategy will cast a new light on how to better use your authorized English textbooks.

The Use of Dicto-Comp and Related Techniques
稲原 祐子(富山県立富山東高等学校)

This presentation will show both the effect of reproduction activities in improving the productive skills (speaking and writing) in English and some activities that can be conducted in daily lessons. Japanese high school students are still inexperienced learners in using English. Therefore, teachers are expected to instruct both the content and language aspects of English learning. This gives a lot of work to both teachers and students in speaking and writing instruction. From the perspective of the students, it is difficult to think of what and how to express from the very beginning. From the teachers' point of view, it takes much time if they always instruct students individually. It is believed that reproduction activities are one of the ways to solve these problems and help improve students' abilities to express themselves in English. Based on this idea, the speaker has made use of Dicto-comp and related techniques and will show some of the activities conducted in English I, English II, and Writing in this presentation. Your advice or suggestions will be welcome.

To make Japanese students more active speakers of English
平山 欣孝(三重県立久居高等学校)

What are the objectives of English Education here in Japan? According to THE COURSE OF STUDY, they are "To develop students' practical communication abilities such as understanding information and the speaker's or writer's intentions, and expressing their own ideas, deepening the understanding of language and culture, and fostering a positive attitude toward communication through foreign languages."

One of the problems we face today in Japanese classrooms is students' inability to express themselves in English, or in any other language including their own language, Japanese. I presume the cause of this is because Japanese students are confined in a classroom with a large number of students, and because teachers are doing "What Romans do in Rome" in such a situation. As a result students are not used to speaking out. Teachers sometimes try to encourage them to speak out, but usually find it is not easy.

I would like to think about the ways to nurture students who can use English and express themselves more actively. The first step is to make students have their own opinions, the second step is to make students feel comfortable to use English, and the third step is to actually use English at Production stage. I would like also to show you some ways in which I have tried to incorporate the use of ICT for this purpose in English classrooms.

第2会場:小学校英語必修化と中学校の英語指導

司会者: 松川 禮子(岐阜県教育委員会)
提案者: 樋田 光代(岐阜市立藍川北中学校) ・加納 幹雄(金沢大学)・小林 敦子(長野県総合教育センター)

小学校英語と中学校英語を無理なくつなぐ兼務の取り組み
樋田 光代(岐阜県岐阜市立藍川北中学校)

岐阜県瑞穂市立生津小 学校で英語活動に関わったのち、岐阜市立藍川北中学校に赴任し、藍川小学校の高学年の英語を担当している。英語に対する前向きな姿勢を育み、小学校英語か ら中学校英語までを滑らかに接続していくための取り組みを4つの内容についてまとめた。①小学校高学年をひきつける英語活動について。小学校の高学年にお いては、親しんできた英語の表現を自分で選びそれを使う面白さと、相手に伝わったときの喜びを楽しむことができるようになる。そこで、高学年がより英語に 対する興味や関心を高めていくことができる活動の在り方を考えた。②中学校に入学した生徒が生かした力について。小学校の英語の時間に身につけたコミュニ ケーションのマナーや、会話をつないでいくといったコミュニケーションを豊かにしていく力を、中学校になった生徒たちが自然と英語の授業の中で見せてい る。小学校から中学校まで、その年の児童・生徒の実態に合わせて系統的に取り上げ、より確かな力となっていくようにしている。③中学校でのつまずきを軽減 する文字と親しむ活動について。入門期に文字の識別の力を調べてみたところ、小学校4年で学んでいるはずのローマ字の定着は期待するほど高くない場合が多 かった。また、英語塾に通う児童が増えてきたこともあり、最近では個人差の開きもあらたな配慮事項となってきた。実態把握をしっかり行ない、実態に合った 文字に親しむ取り組みを行っていくことが文字に関する抵抗を減らしていくために重要であるとわかってきた。④小学校と中学校の橋渡しとなるブリッジユニッ トの開発についてなど、兼務で携わることにより感じた小中英語のギャップと、それを減らしていく取り組みをまとめる。

小学校英語必修化と中学校の英語指導
加納 幹雄(金沢大学)

本発表標題では、小学校の英語と中学校の英語を並べて考える必要があるが、教科としての位置づけとはなっていないために、算数・数学といった例と同列で論じるわけにはいかない。そこで、大きく論点を3つに絞って考えることとする。

1 小学校における義務教育内容としての英語

戦 後の新しい教育が始まってから、教育内容は何度も編成替えを行ってきている。最近でも、学習指導要領の改訂に伴い、新しい教科や科目などが出て来て話題と なっている。つまり、教育の内容が社会の変化や時代の要求に応じて変化を繰り返してきたということである。小学校の英語については、前回の学習指導要領に おいて、「総合的な学習の時間」で扱うことができることとなった。もちろん、扱わないことでも構わない。ところが、今回の学習指導要領では、教科でも「総 合的な学習の時間」でもないが、学校教育課程の中にその位置づけが明確になされた。この点を見落とすことはできない。つまり、義務教育の内容に位置づけら れたということは、日本人すべてが確実に身に付けなければならない資質・能力が新たに付与されたのである。このことから、英語は扱うべきか否かという議論 から完全に離脱したということを意味している。

2 学習指導要領の記述から読み取る事項

小学校と中学校の学習指導要領を並べてみると、(まだ、解説書が出ていないので、その趣旨は憶測の域であるが)いくつかの考え方の特徴が見える。

  1. 目標における、コミュニケーション能力の「素地」と「基礎」の育成
  2. 内容における、コミュニケーションに係る活動や「体験的な理解」と「実践的な」運用能力
  3. 内容の取り扱いにおける、コミュニケーションの体験や言語活動を行わせる際の「コミュニケーションの場面」や「コミュニケーションの働き」
  4. 各学年における指導上の配慮事項における「初めての学習」と「一定の素地が育成されることを踏まえる指導」
  5. その他

3 小学校の英語と中学校の英語で、これから考えたいこと

  1. 小学校の児童を動かす工夫と英語の教科の専門性の統合
  2. 小学校の先生と中学校の先生のさまざまな形での、さまざまな内容での連絡会の促進
  3. その他

学級担任主体の英語活動を目指して
小林 敦子(長野県総合教育センター)

小 学校英語活動が平成23年度から必修化されることになった。現行学習指導要領のもと、長野県では、現行学習指導要領のもと、必修化に向けての準備態勢には 市町村間、学校間でかなり差があるのが実態である。特区においてはまさに英語教育が行われていたり、英語講師(JTE)を雇用している市ではALT+ JTE+学級担任によるTTの授業が行われたりしている一方、ALTが常駐している学校ではALT主導型の授業、1年間に2~3回ALTが訪問してくれる 時のみ英語活動を行っている学校等さまざまである。

ALTとのTTを毎週行うための予算の裏づけがない以上、担任が一人でやるしかないと考 え、ともかく手探りの状態から学級担任一人で英語活動に取り組み始めた先生方も大勢いる。英語が苦手な学級担任が初めて英語活動に取り組み、児童とともに 変容した事例を紹介しながら、学級担任だからこそできる英語活動の良さについて述べたい。また、必修化に向けて長野県として中核教員研修の取り組み、セン ターにおける講座の紹介をしたい。1人の100歩の前進より100人の1歩前進に向けた研修を考えていきたい。」

  1. 長野県における小学校外国語活動に向けての課題
       ・英語活動に取り組んでいる学校の実態
       ・アンケート結果からの分析
  2. 学級担任ができる英語活動の良さ
       ・授業の実際 〈映像資料〉
       ・児童の反応と実践した学級担任の声
  3. 必修化に向けて教員研修のあり方
       ・英語に苦手意識を持つ先生を巻き込むには?
       ・集中研修およびセンター研修講座について

この3本柱で話そうと思っています。

課題研究プロジェクト発表 29日(日) 12:45~14:45

1.アジアの英語教科書比較研究:わが国の英語教育への示唆

司会者: 川畑 松晴(金沢学院大学)・八田 玄二(椙山女学院大学)
提案者: 相川 真佐夫(京都外国語短期大学)・磯辺 ゆかり(和歌山大学)・江利 川春雄(和歌山大学)・木村 麻衣子(武庫川女子大学)・高橋 美由紀(愛知教育大学)・樋口 謙一郎(椙山女学園大学)・室井 美稚子(清泉女学院大学)

メンバーと担当国・地域: 相川真佐夫(台湾)、磯辺ゆかり(中国)、江利川 春雄(日本)、川畑松晴(ベトナム、カンボジア)、木村麻衣子(韓国)、高橋美由紀(タイ)、八田玄二(ベトナム)、樋口謙一郎(韓国、北朝鮮)、室井美 稚子(バングラデシュ)(五十音順)

本研究は、主にEFLの環境にあるアジア諸国の英語教科書を分析し、わが国の英語教育に資することを目的としている。今年が3年目 で、最後の発表である。過去2大会の発表項目は次の通りである。

36回和歌山大会 韓国(中学)・ベトナム(小・中学)・バングラデシュ(中学)教科書について  カリキュラム中の教科書の位置づけ、教育ビジョンと教育内容との連関、現在の教科書に至る背景などについて発表   各自が収集した教科書を持ち寄り実施した「アジアの教科書展」(わが国の明治時代からのものを含む205点)も大好評であっ た

37回三重大会 日本、台湾、中国、韓国の中学校の教科書について  共通の分析視点(①題材内容②言語機能③文法④語彙⑤活動内容・練習 ⑥その他)に基づいて発表 この2回の発表で明らかになった主な点は、<①調査し たアジアの教科書はどれも分量が多く(わが国の2~3倍)、従って語彙や文法項目の反復頻度が高い。②題材・内容や登場人物には国による差が大きい。③多 くは小学校の英語教育との連携が考慮されている。>である。

今回は、国・地域別の発表形式ではなく、これまでの調査に基づき、「わが国の英語教育に何らかの示唆をするべく、メンバー全員が、次 のような観点から発表する。

 ①教科書採択制度:国定/検定/自由採択
 ②形態面:サイズ、ページ数、冊数、語彙数;カラー写真、イラスト
 ③編集の基本原則:文法、機能、主題、場面、タスク;混合型
 ④題材・ジャンル
 ⑤登場人物
 ⑥内容
 ⑦文法の扱い方
 ⑧全体構成
 ⑨その他

小・中の学習指導要領が改訂され、これに基づき教科書も改訂作業に着手しようとするこの時期に、私たちの発表がわが国の教科書作り/ 制度改革に少しでも貢献することを願っている。

2.リーディング指導における生徒の読みを深める発問づくり

司会者: 田中 武夫(山梨大学)
提案者: 東 正一(石川県立金沢二水高等学校)・雨宮 靖子(山梨県立甲府西高等学校)・伊佐地 恒久(岐阜県立多治見高等学校)・奥村 信彦(長野工業高等専門学校)・紺渡 弘幸(仁愛大学)・島田 勝正(桃山学院大学)・田中 武夫(山梨大学)・森 暢子(愛知工業大学)

リーディング指導における生徒の読みを深める発問づくり
田中 武夫(山梨大学)・東 正一(金沢二水高校)・雨宮 靖子(山梨県立甲府西高等学校)・紺渡 弘幸(仁愛大学)・森 暢子(愛知工業大学)

最近の教科書には幅広い内容を扱った教材が多く、そのような教材をどのように扱えば、生徒の深い読みを促すことができるかはリーディ ング指導の課題の一つとして考えられる。本研究プロジェクトの目的は、多様なテキストタイプのリーディング教材を対象に、生徒がいかに興味をもってテキス トに向き合い、深い読みを促すきっかけをつくり出すことができるかを考え、教師による具体的な発問を考案し、それを提案することにある。そこで、本年度の プロジェクト研究発表は、以下のような構成で行う。(1) 共通研究30分(研究概要10分+発問紹介20分):田中が担当、(2) 個人発表60分(1人20分(発表20分)×3人):奥村、伊佐地、島田が担当、(3) 自由討議30分(共通研究・個人発表を受け自由に意見交換する)。 

田中担当の共通研究発表では、本研究の趣旨、および、研究の経緯等を紹介し、実際の教科書の英文テキスト(説明文と物語文の2種類)を もとにメンバー全 員で考えた、生徒の読みを深める発問の具体例を紹介する。その具体的発問例を踏まえ、伊佐地、奥村、島田による個人発表の論考をもとに、リーディング指導 における生徒の読みを深める発問とはどういうものなのかをフロアーの参加者とともに検討したい。

複数の発問により促す読み深めのプロセス
奥村 信彦(長野工業高等専門学校)

「読みを深める」ことの大切さは国語ばかりでなく英語の読解指導でも同じ、との認識は一般的と思われるが、目標の設定や指導方法につ いては研究の余地がある。本プロジェクトは学習者の「読み深め」を促す手段として発問に注目し、テキストのタイプに応じた発問づくりの研究を進めている。

本発表では、「読み深め(深め読み)」とは何か、にまず焦点をあてる。読み深めには推論が大きく関わる(勝野, 2003)と考えられるが、推論の種類とその機能に注目しながら読解指導における読み深めの定義を試みる。同時に、読み深めの指導の必要性に触れ、その後 にテキストタイプと読み深めを促す発問の関係に注目する。発問の内容がテキストタイプにより異なる可能性があるが、これはテキストのタイプにより読解のプ ロセスに差がある傾向に起因するものと考えられる。

以上を踏まえた上で、①英語で発問し英語で応答を求めることの意義、②複数の発問を通して次第に読みを深めさせるプロセスの重要性につ いて論じる。①に ついては、日本語による発問と応答のほうが読みを深めるのに適しているとの主張がある。そのようなケースももちろんあり得るが、英語でのインタラクション により読みの深まりにどのような違いが生まれるのか、を具体的に探る。②については、学習者の読みは一つの発問により直ちに深まるのではなく、事実関係の 把握を問う質問も交えながら徐々に読みが深まるよう指導するプロセスが望ましいとの認識から MERRIER Approach(渡辺・野澤・酒井, 1997~1998)を考慮に入れた指導例を提案する。

高校生のための読みを深める読解発問づくり
伊佐地 恒久(岐阜県立多治見高等学校)

「英語が使える」日本人の育成のための行動計画(文部科学省, 2003)は、中・高等学校の英語教育においてコミュニケーション能力の育成を図っていく指導の工夫の必要性を訴えている。一方、日本の高等学校における リーディング指導では、いまだに「文法訳読式」の指導が広く行われている(語学教育研究所, 2007)。このような授業では、生徒は「訳」を完成することが自己目的化し、英文の「理解」は進みにくい(語学教育研究所, 2007)。

本プロジェクトは、生徒がいかに興味を持ってテキストに向き合い、深い読みを促すことができるかを検討し、それに基づいた具体的な発問 を考案し、提案す ることを目的としている。本発表においては、高校生を指導対象とした取り組みを報告する。初めに、リーディング指導における深い読みの重要性について考察 する。深い読みは、物語と説明文ではその意味するところが異なると思われるので、それぞれについて深い読みを定義し、その重要性を明確化する。次に、実際 の高校におけるリーディング指導を念頭に置いた発問づくりのプロセスと具体的な発問例をテキストと共に提示する。リーディングの授業準備をする際、教師は まず教材であるテキストを解釈し、それに基づいて発問を作成する。教材解釈とは、教師が教材を通して生徒に伝えたいことを、どのように生徒に働きかけてい くのかを前もって考えることである(田中, 2008)。そして、それを具体化したものが発問であり、教師は発問を通して生徒に働きかけていくと言える。発問を、主に生徒に発する時点(Pre- reading, While-reading, Post-reading)と発問内容(事実、推論、など)から分類し、生徒の読みを促し深める助けとなる発問はどのようなものであるのか、物語文と説明 文の2つにテキストタイプについて検討する。また、提示した発問を実際に用いた授業の報告を行う。

読解授業における推論的発問の作り方の原則
島田 勝正(桃山学院大学)

伝統的な文法訳読式を用いた読解授業には、逐語訳・逐文訳の単調な授業展開になってしまうなどといった様々な批判がある。本発表で は、その代替法として教師の発問、特に推論的発問を重視した読解授業を検討する。

推論的発問では、答えが本文中に明示されていない。したがって、生徒は答えを本文中から抜き出すことはできない。ただし、答えを導くた めのヒントが本文 中に隠されている。生徒はそのヒントを手がかりに推理、推論して答えを導く。推論的発問に答えるためには、生徒は自分の推論の証拠(evidence)捜 しをすることになる。したがって、生徒は直接発問に関わる部分だけでなく、他の部分も読むことになる。この証拠捜しの作業が、本文を繰り返し読む動機づけ となる。

質の高い推論的発問は、次の原則を満たす必要がある。

  1. 明確性の原則(Clarity Principle) 発問は明確であること。生徒が何をしたらいいか、何を考えたらいいのか分からなくて、ウロウロしてしまう場合の大半は、発問が不明確である。
  2. 挑戦性の原則("Challenging" Principle) 発問は学習意欲を十分に喚起するほどに挑戦的であること。逐語的発問が挑戦性に欠けるのは、答えが本文中に書いてあるからである。英語の得意な生徒は、す ぐ答えを見つけて退屈する。推論的発問は英語の得意な生徒にとっても難しく、パズルを解くような挑発性がある。
  3. 意見差の原則(Opinion-gap Principle) 発問は複数の解答が期待できること。この意見の対立が、本文における根拠捜しの動機づけになる。生徒の反応に適切に応じるためには、教材研究の段階で多様 な解釈を準備しておく必要がある。
  4. 証拠の原則("Evidence-based" Principle) 推論の根拠は、本文中に求めさせること。本文から遊離した討論では読解は深まらない。

3.第二言語習得研究の成果とその英語教育への応用

司会者: 横田 秀樹(岐阜医療科学大学)
提案者: 白畑 知彦(静岡大学)・伊達 正起(福井大学)・永倉 由里(常葉学園短期大学)

誤りの訂正が有効な場合とそうでない場合
白畑 知彦(静岡大学)

これまで数多くの外国語教授理論が紹介されてきた。例えば、Long (1983)を始めとする相互交流仮説の信奉者達は,学習者が他者と相互交流することは,自らが受けるインプットの理解を助長させるだけでなく,相手から フィードバックを受けられるので,その時点で学習者の立てている中間言語規則が適切かどうか検証できる利点があると主張する。確かに,相互交流は,外国語 学習には必須であろう。同様に,KrashenやSwainが提唱するように,インプットをたくさん受け,アウトプットを積極的におこなうことは重要であ ろう。しかし,横田(2007)も指摘しているが,これらの研究者達の問題点は自らが支持する教授理論が外国語学習のあらゆる領域に均一に効果的であるか のように主張することである。彼らの研究報告には,ある特定の文法項目のみを実験材料にし,そこから得られたデータを過度に一般化することで自らの教授法 の優秀性を主張しているものもある。中には,学習者達に「今回受けた教授法は効果があると思うか?」といった類の質問紙を用意し,「効果があると思う」と する回答が多ければその教授法は「有効」と主張する研究論文さえある。そこで,本発表では,まず外国語学習の全ての領域に等しく有効な教授法はおそらくな いことを主張する。そして,その帰結として,誤りの訂正が効果的な領域とそうでない領域があることを見る。すなわち,文法的特性の強い領域を学習する際に 否定証拠を用いてもあまり効果的でないことを、収集データを基に論ずる。一方で,母語習得同様,外国語学習の際にも自然な習得順序は存在するが,意味が関 与する語用論的色彩の強い領域の誤りには明示的訂正は比較的有効であることも主張する。文法項目によって教授法を変えるべきことを仮説として提示する。な お、本発表で用いる研究データは、白畑(2008)でも一部報告済みのものである。

第二言語習得順序と説明的妥当性
横田 秀樹(岐阜医療科学大学)

課題別研究プロジェクト「第二言語習得研究の成果とその英語教育への応用」は、日本の学校での外国語としての英語教育環境で、第二言 語習得(SLA)研究の成果をどのように応用できるのかを探究することを目的としている。

本発表では、第二言語の習得順序に焦点を当てる。文法形態素の習得順序(Dulay & Burt, 1974; Krashen & Terrell, 1983; Shirahata 1988他)および関係節の接近度階層(Keenan and Comrie,1977)など、SLAにおける一定の習得順序の存在が広く議論されてきた。しかし、関連研究の多くにおいて、記述的妥当性は満たすが、説 明的妥当性はまだ満足のいくものではない。本研究の目的は、SLA研究における習得順序の説明的妥当性を探究することである。これまでSLAで議論されて きた有標性/無標性とともに、言語理論を通して再考したところ、習得の難易度を決定する要因は、(1) 解釈不可能素性の有無、(2) 特定のルールを構成する関連素性の数、 (3) ルールの適用範囲、(4) 移動距離、(5) L1とL2の範疇構造の違いが可能性として考えられる。これら5つの決定要因は、「人間言語の演算処理システムは、できる限り負担を少なくするような(経 済的な)ものである」と仮定すると、脳の処理負担増えると結果として習得の難易度が増すという共通性がある。あくまで示唆的な段階であるが、これらの条件 を、NICT JLE Corpus(和泉、内元、伊佐原, 2004)のエラータグ付きデータおよび疑問文抽出タスクを用い、特に助動詞のbeとdoのデータを中心に、その妥当性を検証する

リハーサル時の気づきがタスク運用に及ぼす影響について
伊達 正起(福井大学)

タスクにおいてリハーサルを与えることがその後のタスク運用における英語の正確さ・流暢さ・複雑さに影響を及ぼすことが指摘されてい る。一方、第2言語習得において気づきが重要な要因である点も指摘されている。しかし、リハーサルで気づいたこと(エラー形式や知らなかった形式)がタス ク運用時にどの程度使用されているのかという研究はない。そのため、本当に「リハーサルで生じた気づきによってタスク運用時の英語の正確さが向上する」の かどうかが不明である。また、リハーサルで運用された英語(内容及び表現)がタスク運用時にどの程度転移されて使用されているのかという研究もない。その ため、本当に「リハーサルで運用した英語の転移によってタスク運用時の英語の流暢さが向上する」のかどうかも不明である。

本発表では、ある与えられたテーマについて英語を運用するというモノローグ・タスクを使った研究から、次の2点に焦点をあてる:(1) リハーサルで生じ た何に対する気づきがどの程度タスク運用時に使用されるのか(2)リハーサルで運用した英語がどの程度タスク運用時に使用されるのか。そして、多くの先行 研究が指摘する「タスク運用におけるリハーサル効果」の信頼性について言及する。

実践報告/第二言語習得研究を活かした日本人のためのストラテジー・トレーニング
永倉 由里(常葉学園短期大学)

本発表は、昨年の三重大会で、その方向性と具体的指導案を示した「ストラテジー・トレーニング」の実践報告である。すなわち、「モデ ルとするChamot et al.(1999)が行った実証的学習ストラテジー研究に、日本人学習者の特性に配慮して、村野井(2006)のPCPP指導をはじめとするいくつかの工 夫を加えたストラテジー・トレーニング(永倉, 2007)を行えば、より効率のよい学びを行える"自律性のある学習者"への成長を促すことができる」という仮説を検証するためのものである。

永倉(2006)の結果を省み、①言語学習のプロセスとメカニズムの紹介、②日本人が慣れ親しんできた授業形態や学習習慣を踏まえた PCPP指導、 ③EFL環境での英語学習の目的意識の再考、④個人差の大きい学習者要因への対応としてのメタ認知ストラテジーの強調などを加えて実施したストラテジー・ トレーニングの実践状況と質的アンケート調査、仮定に関する量的・質的調査結果を示し、ストラテジー・トレーニングの有効性を確認すると同時に、授業でス トラテジー指導を行う際の問題点をあげる。

※PCPP=「提示(presentation)-理解(comprehension)-練習(practice)-産出 (production)」という言語学習プロセス。

自由研究発表・実践報告 第1日目(6月28日)

自由研究発表  第1日  会場1(F101) ① 13:10~13:40

小規模校(複式学級)の特性を活かした英語活動の実践事例
石濵 博之(上越教育大学)

糸魚川市立上早川小学校では、平成18年度から英語活動を導入した。その英語活動を導入する際、上早川小学校の特性を活かした授業展開 をした。上早川小学校は、全校児童は20名たらずの複式学級で授業が展開されている小規模校である。

本発表では、小規模校である特性を活かしながら、平成18年度の英語活動の取り組みについて発表する。

自由研究発表  第1日  会場1(F101) ② 13:45~14:15

小学校英語教員養成ーブリッジ制導入の課題
幸田 明子(常葉学園大学)

2002 年4月以来、さまざまな歩みを見せてきた公立小学校の英語教育だが、2008年4月の今、一部の小学校では、「英語ノート」がモデルとして研究され、新た な局面を迎えているといえる。2006年3月のベネッセ教育研究センターの調査によれば、学級担任による授業の広がりが特徴的であるが、教員研修となる と、59,4%の学校で校内研修を全く行なっていないという。文部科学省、各教育委員会による教員のサポート体制は、十分とは言えず、現場では負担がます ます大きくなってきている。

常葉学園大学、外国語学部では、平成12年よりブリッジ制を取り入れ、教員養成プログラムを推進している。1年生から、段階的に小学校 教員、中学校、高校教員養成のカリキュラムを組んでいる。現状を学生のアンケートを基に検討し、課題を考察する。

地域の教育委員会と大学の連携による教員研修プログラムは急務であろう。現場の教員に取り、どんな研修が一番大切なのかを考察してい く。

自由研究発表  第1日  会場1(F101) ③ 14:20~14:50

小学生の英語語彙認識における音声情報の役割
堀田 誠(山梨県笛吹市立境川小学校)

本研究の目的は,小学生の英語語彙学習において,文字情報を認識する際,音声情報がどのような役割を果たすのかについて明らかにしよう とするものである。

英語語彙の意味がわかるという場合には,語彙の音声情報から意味が分かる場合と語彙の文字情報から意味がわかる場合とがある。 Frith (1985)は,文字情報から意味を理解する場面で,①英語語彙の文字を何かの形と関連づけて認識し,意味を把握する方略を用いる局面,②文字情報を音声 情報と関連づけて語彙の意味を把握する方略を用いる局面,③音声情報と関連づけることなく文字情報を認識して語彙の意味を把握する方略を用いる局面,とい う3つの局面があると述べている。そこで,本研究では,小学生が英語語彙学習における文字認識の場面で,どのような方略を用いて文字情報を認識しているの かについて考察を行いたいと考える。

実験参加者は公立小学校の3年生であった。実験では,実験参加者が2つのグループに分けられた。一つは,英語語彙の音声情報を学習した 後で文字情報 を学習するグループ,もう一つは,英語語彙の文字情報を学習したあとで音声情報を学習するグループであった。両方のグループは,最初に「英語よみとりテス ト」を受けた。その後,各グループはそれぞれの実験手続に基づいて英語語彙を学習した。両方のグループとも,文字情報の学習が終了した時点で「英語よみと りテスト」を受けた。学習前と学習後に受けた「英語よみとりテスト」は同一のテストであった。これら「英語よみとりテスト」の結果から,英語語彙認識にお ける音声情報の役割について考察を行いたいと考える。

自由研究発表  第1日  会場1(F101) ④ 14:55~15:25

小学校英語指導者のタイプ別スキルアップの必要性と現職教員研修の試案
東 悦子(和歌山大学)

新学習指導要領では小学校5・6年で週1コマ「外国語活動」を実施することとなり、すべての公立小学校で、小学校の教員が英語活動に携 わることにな る。これまでの取り組みは、学校の裁量に任されるところが大きく、多様性に富んでいた。従って、指導に当たってきた教員の経験も多様で、ALTがいなくと も教室英語を使いこなし授業を進めてゆける教員もいれば、授業の進行をALTに委ね、機器の操作や児童への注意喚起等の補助的な部分を担当してきた教員も いる。今後「外国語活動」の必修化にあたり、初めて指導に携わることになる教員もいるであろう。このように指導者の現状も多様である。

これまで数年に渡り、国際理解に関する学習の一環として、小学校等における留学生による国際交流活動をコーディネートしてきた。また昨 年度は、小学 校における英語活動等国際理解活動推進事業に係る講師として、和歌山県下の拠点校の取り組みを中心とし、小学校英語活動への参与観察や指導助言を行なっ た。このような機会を通して、小学校英語活動に携わる指導者が抱える様々な悩みや課題に直面することとなった。本発表では、以上の経験に基づき、多様な指 導者のタイプ別スキルアップの具体的な方法とそれを支援するための現職教員研修プログラムの試案を述べる。

自由研究発表  第1日  会場2(F102) ① 13:10~13:40

中学校における10分間読みの効果 -読解力と動機づけの観点から-
松井 孝彦(愛知教育大学附属名古屋中学校)

教育現場において,検定教科書のみでは十分な言語インプットができないという理由から,多読は注目を集めている。しかし,小学生から大 人までその実 践例は多くあるものの,実証研究はそれほど多く見られない。また,その実証研究のほとんどが,授業後の特別カリキュラムとして設定された多読プログラム や,選択英語の時間に設定された多読活動に参加した生徒の変容を分析,検証したものである。授業の一環として言語インプットの量を多くし,リーディングに 関わる力が高まるような多読指導の工夫が必要であると考える。

本研究では,国公立中学校で週3コマ設定されている正規の英語の授業において,週1コマの授業で10分間のSSR(Sustained Silent Reading)を継続的に行った後の,中学生の変容について調査をした。本研究の具体的な目的は以下の2点であった。

a) 中学校において,正規の授業の中で週1回10分間のSSRを行うことが,読解力やリーディングの速度を高めるかどうか。
b) 中学校において,正規の授業の中で週1回10分間のSSRを行うことで,L2リーディングに対する動機づけがどのように変化するか。

中学校3年生に対して3ヶ月間実践をした結果,読解力に関しては有意差がでなかったものの,リーディングの速度には,一部有意差が見ら れた。また,L2リーディングに対する動機づけにも,いくつかの点で変化が見られた。

なお,本研究は2008年度以降長期にわたって行われる10分間SSRの予備的な実践であり,3ヶ月間のみの実践による中学生の変容を 記述することが本来の目的ではないことを申し添えておく。

自由研究発表  第1日  会場2(F102) ② 13:45~14:15

活動意欲を高める要因
岩本 藤男(静岡県焼津市立大富中学校)

生徒が生き生きと授業に取り組めるように授業改善を進める必要性が叫ばれ、近年、多くの研修会が実施されている。その中で、英語科では 言語活動の在 り方がいっそう問われるようになった。言語活動は、「コミュニケーション能力の育成」と関わりが深いからである。そして、言語活動の設定に際しては、「ど のような工夫をすれば生徒の活動意欲は高まるのか」ということが重要な課題として取り上げられている。「動機付け」の問題は以前から問題にされてきたが、 近年研究者たち(e.g. 池野, 2007)が指摘するように「動機付け」と「意欲づけ」の問題を区別せず、曖昧のまま扱ってきたように思われる。英語教師は、「生徒はどのような理由で英 語を勉強するのか」という「動機付け」の問題よりも「学習意欲を高めたり、低下させたりする要因は何か」という「意欲づけ」の問題に関心がある。

本発表では、中学2年生の授業で実施した「特定の文法項目の定着を目的として行った活動」を生徒がどのように感じたかの調査結果を報告 する。先行研 究を参考にして、「活動の課題は適度な困難度をもっているか」、「課題のトピックは生徒にとって自己関与度が高いものか」という観点から検討した。積極的 に取り組めた活動はどのような特徴をもっていたのかをまとめ、今後、活動を設定する際の参考資料としたい。

自由研究発表  第1日  会場2(F102) ③ 14:20~14:50

生徒のやる気を高める授業の工夫(実態調査)
犬塚 章夫(愛知県総合教育センター)・Jarrell, Douglas(名古屋女子大学)・中根 英登(愛知工業大学)・伊藤 高司(名城大学附属高等学校)・杉山 剛浩(名城大学附属高等学校)

「最近、生徒にやる気が見られないなあ。」「今日は、生徒がやる気を出して取り組んでくれたなあ。」私たちは、日々の授業で生徒の行動 を見て一喜一 憂している。「いったい何が生徒にやる気を出させるのだろう。」「どんなことをすれば生徒の意欲を引き出すことができるのだろう。」そんな思いで研究に取 り組み出した。学習意欲に関する先行研究を参考にして、日本の英語教育環境において教師が考えておくべき点を「生徒をやる気にさせるためのチェックポイン ト13」としてまとめた。本研究は、そのチェックポイント13を教師向けアンケートして用い、生徒の学習意欲を高めるための教師の働きかけの実態を明らか にしたいと考えた。

13のチェックポイント項目は次の通り。1.学習の目標、2.ニーズの把握、3.実態の把握、4.共感的な雰囲気、5.注意の喚起、 6.学習の見通 し、7.チャレンジ精神、8.活動の満足感、9.帰属意識と充実感、10.言語・文化への興味喚起、11.言語の使用体験、12.自律学習、13.評価の フィードバック。

小学校・中学校・高等学校・大学で英語の授業を担当している教師にアンケートを取り、その傾向を調べた。例えば「11.言語の使用体 験」では、小学 校では外国語活動の授業でのコミュニケーション活動に工夫が見られ、高校では逆に大学入試の準備的授業のためかコミュニケーション活動に関わる意欲付けが 減ってくるなど、このアンケートからいくつかの特徴を見ることができた。さらに、それぞれ1つの高校と大学を対象に詳しい記述調査を行い、その内容を全体 のアンケート結果との比較から考察していく。

自由研究発表  第1日  会場2(F102) ④ 14:55~15:25

高校生の英語学習ビリーフ調査(BALLIを用いて)
近藤 泰城(三重県立桑名高等学校)

日本の高校英語教育はこれまで、大学入試を控え、「読む力」「書く力」に重点が置かれて来た。2006年度の大学入試センター試験への リスニングテ ストの導入により、「聞く力」への関心も高まった。しかし、「話す力」まで視野に入れた指導を行っている高校は少数にとどまっているのではないだろうか。 一方、中学校では、高校に比較するとコミュニケーション能力を重視した指導が行われていると思われる。そのような中にあって、日本の高校生は言語学習につ いてどのような信条を持っているのだろうか。Horwitzが1988年に作成したBALLI利用して高校生の英語学習のビリーフを明らかにし、指導の改 善に役立てたいと考えている。

自由研究発表  第1日  会場3(F103) ① 13:10~13:40

クリティカル・リーディングの指導方法:批判的談話分析を応用して
田中 真由美(長岡工業高等専門学校)・阿部 聡(新潟大学(院)・長岡工業高等専門学校)

本発表の目的はリーディング教材の批判的談話分析(Critical Discourse Analysis;略してCDA)に基づくクリティカル・リーディングの指導方法を提案することである。CDAは言語が社会で形成され、かつ社会を形成す るという立場をとり、支配・権力・ヘゲモニー・イデオロギーといった観点から行う社会的分析と言語分析を結合している点にその特徴がある。談話が社会的な 不平等を再生産するというCDAの立場を踏まえ、その役割を担う可能性のある教材を用い、いかにしてリーディング指導を行うかについて探求することが研究 の主な目的である。本研究では、Halliday(1978, 1994)の選択体系機能言語学を応用したFairclough(1989,1992, 1995) のアプローチを採用し、特定の文構造や語彙とそのコミュニケーションにおける機能から、テクストに内在するイデオロギーを明らかにする。この分析結果を基 に、英語教育のリーディング指導において、学習者が言語と社会の関係を意識しながら、批判的な視点でテクストを読み解こうとする態度を養う指導方法を提案 し、発表者が勤務する高等専門学校の学生数名を対象に行ったクリティカル・リーディングの指導実践の結果を報告する。最後に、CDAをリーディング指導に 応用することの問題点についても触れたい。

自由研究発表  第1日  会場3(F103) ② 13:45~14:15

活動形態を変化させるリーディング授業
加藤 和美(愛知大学・東海大学短期大学)

最近のリーディング授業では、参加型授業としてグループ活動を使う例は少なくない。しかし、グループ活動ではテキストの内容を理解した 後の活動が主 になりがちで、実際に学生が本文の文法を正確に理解できたのかどうか教師側がそれを把握することは難しい。また、文法理解を重視すれば、一文一文訳してい くだけの授業になってしまう。テキストの内容理解と文法理解の両方を兼ねた参加型の活動はまだ少ないように思える。

そこで、リーディングの授業に、個人、グループ活動、全体授業をうまく組み込むことで、教師が学生の文法理解度を確認しながら、学生中 心の参加型授 業をすることができるのでないかと考えた。本研究では15ほどの独立したさまざまなテーマのあるテキストを使用し、テキストの内容理解から細かな文法理解 へと進む段階をステージ1からステージ4に分けて、その中に個人での活動、グループ活動、そして全体授業を組みこむ方法を考えた。

本発表では、実際に2007年に愛知大学と東海大学短期大学部で行ったリーディング授業の方法について説明する。2つの学校での授業を 比較し、どのレベルでも幅広く使えるリーディング指導方法をさらに考えていきたい。

自由研究発表  第1日  会場3(F103) ③ 14:20~14:50

感動的な読み物教材やテーマに基づく授業が高校生の情意面に与える影響
森 一生(福井県立丹南高等学校)

検定済英語科教科書では論説文が大半を占め、琴線に触れるような読み物教材がほとんど見当たらなくなってきているように感じる。英語教 育の目的は入 試に対応できる英語についての知識や技能を教えることだけではなく、英語を学ぶ楽しさや感動を通して人間的な成長を図ることも軽視されてはいけないと考え る。

そこで、昨年度本校の3年選択科目『英文学演習』において1年間実践した内容を紹介する。前半はいくつかの感動的な読み物教材を扱い、 感想や意見を 日本語で書かせた。また、後半はKing牧師、Nelson Mandela氏、Jane Elliott氏の『青い目・茶色い目』の実験授業を扱い、人種差別をテーマにした授業を行った。

授業の前後で生徒の情意面や人間的な成長の跡がみられたかどうか報告したい。

自由研究発表  第1日  会場3(F103) ④ 14:55~15:25

協働学習が英文読解に与える影響
寺島 清一(筑波大学(院))

1.研究の背景
昨今の学校の教育現場では,「読解力」の指導が関心の的になっている。OECDによるPISA学力テストの結果,回数を重ね る度に加盟国中の日本の順位が下降し,日本の生徒は「読解力」が十分に備わっていないという報告を受けたからである。文部科学省では,PISA調査の結果 分析と改善の方向の中で,「読解力は,国語だけではなく,各教科,総合的な学習の時間など学校の教育活動全体で身に付けていくべきものであり,教科等の枠 を超えた共通理解と取組の推進が重要である」と述べている。そこで,英語の授業の中で,この読解力向上の問題にどう取り組んでいくべきかについて方策を考 えることが重要だと判断した。本研究では,現状の読解テストを比較分析し,有効な指導方法として,PISA読解力調査で毎回好成績を残しているフィンラン ドで日常的に行われているという「協働学習」を取り上げ,その英文読解に及ぼす影響を考察する。

2.研究の目的
「発達の最近接領域」理論に基づいた協働学習は,外国語習得においても有効に働き,日本人中学生の英文読解に寄与するのかを 検証する。読解力の指標としてPISAの掲げる読解力の項目のうち,日本人生徒が苦手とする「テキストの解釈」(文部科学省 調査報告2005)に焦点を あて研究を進める。

3.方法
(1)協力者: つくば市立中学校 第3学年(選択教科「英語」2クラス)37名
(2)手続き: Aクラス:協働学習で読解活動→遅延再生+理解度客観テスト
         Bクラス:個別学習で読解活動→遅延再生+理解度客観テスト
         ※Aクラスでは,読解活動の録音やワークシート分析からの質的研究を行い考察を加える。
(3)テキスト:全国公立高校入学試験問題より読解問題を抜粋

4.結果と考察
協働学習クラスと個別学習クラスの差異について,遅延再生テストと理解度客観テストの結果をそれぞれt検定で分析した結果,協働学習クラスの方が正答率が 高い傾向があったものの,双方とも有意差は見られなかった。詳細な結果と考察に関しては,当日口頭で発表する。

自由研究発表  第1日  会場4(F104) ① 13:10~13:40

文法知識と文法運用力との関係に関する縦断的研究 -中学1年既習文法項目に焦点をあてて-
岡崎 浩幸(富山大学)

本研究は、文法に関する知識とその知識を駆使して言いたいことを実際の場面で言えるための文法運用力の関係を1年にわたって調査した、 中学生を対象とした縦断的研究である。

昨年7月、中学2年生(153名)が1年で学習した16の文法項目の定着状況を調査するために、2種類のテストを実施した。ひとつは、 文法知識テス ト(筆記テスト)で文法項目についての知識を問う多肢選択形式と語順を問う並べ替え形式からなっている。もうひとつのテスト(スピーキングテスト)は、文 法知識を使いこなして言いたいことなどを実際の場面で言えるようになっているかどうかを測定する文法運用能力テストである。1年後に同じテストを同じ生徒 (現在3年生)に実施し、その結果を昨年と比較する。

昨年の結果、二つのテストにおいて弱い相関があったのは4項目のみであった。また文法知識テストにおいて語順の定着率の低いものが5項 目あった。文 法運用力テストの結果、How many…? How long…? Where…? など語順の定着率が低いことがわかった。1年後の結果を昨年と比較し検討したい。

リサーチクエスチョンは以下のとおりである。

  1. 1年後、文法知識と文法運用力の相関関係はどのように変化し ているか?
  2. 1年後、文法知識と文法運用力それぞれの定着率はどのように変化したか?

自由研究発表  第1日  会場4(F104) ② 13:45~14:15

中学生対象スピーキングテストの妥当性について
占部 昌蔵(神戸市立長坂中学校)

本研究の目的は、中学生対象のあるスピーキングテスト(平成17年実施「特定の課題に関する調査」の一部及びHOPEテストの前半部) の妥当性を比較し検証することである。

中学生を対象としたスピーキングテストは、各学校で独自に行われていることが多いのが現状である。ところが、今回の国立教育政策研究所 による調査 は、「話すこと」に関する初めての大規模な調査であった(「読むこと」「聴くこと」「書くこと」に関してはすでに行われている)。この調査の結果は公開さ れているが、この調査の開発過程までは公表されていない。そして、この調査の結果から、いくつかのタスクへの疑問が生じた。これが本研究を行う動機の一つ となった。

本研究では、公立中学3年生を対象に2種類のスピーキングテストを実施した。そして、これらのテスト中での発話を分析対象とし、これら のテストの妥当性について考察を試みる。

自由研究発表  第1日  会場4(F104) ③ 14:20~14:50

総合的英語力測定テストから見た語彙テストの有用性
石川 有香(名古屋工業大学)

2006 年度よりセンター試験にもリスニング試験が導入され、英語熟達度は、多角的に測定されることが多くなってきた。教育現場でも、熟達度評価に、リーディング とリスニングの両方のテストを持ち込むことが増えているが、指導の時間は限られているため、テストに割く時間を最小限に抑えることが、テスト実用性の要と なる。短時間で、TOEICなどの一般的な英語能力テストで測定される、リーディング力やリスニング力に近い測定値を得る方法はないだろうか。ここでは、 語彙テストの有効性を考えてみる。

文字による受容語彙テスト力とリーディング力や総合的英語力の関係については、これまでにも様々な研究がなされており、高い相関がみら れることが報 告されている(島本,1998; Hu & Nation, 2000など)。しかし、リスニング力に関しては、音声を用いた受容語彙テストや、文字受容語彙テストなどとの関係を調査した先行研究は、まだ、数が限ら れている(島本、2007など)。また、測定方法が確定していないために、それらの調査結果の比較も難しくなっている。

本研究では、文字受容語彙テストと音声受容語彙テストの結果を調査した、石川(2007)を踏まえ、工学系大学の大学生を対象として、 音声受容語彙 テスト・文字受容語彙テストを行う。被験者は、同時期に、総合的英語力を測定する、リーディング・テストとリスニング・テストを受験しており、これらの結 果と比較することで、代替テストとしての語彙テストの有効性を調査する。

自由研究発表  第1日  会場4(F104) ④ 14:55~15:25

英語語彙の反義性および共起性判定にかかる処理速度の比較
石川 慎一郎(神戸大学)

L2 学習者の目標言語における語彙理解の機構についてはさまざまな立場が提唱されており,近年では反応速度実験を中心とする行動計測の結果をふまえた研究成果 の報告も増えている(門田 1998,門田2002他)。石川(2008a)では,被験者に英単語のペアを聴取させ,反義性の有無を回答させる意味論的処理課題と押韻性の有無を回答 させる音韻論的処理課題を実施し,それぞれの反応速度を計測した。しかし,語彙理解というのはきわめて多面的な概念である。Nation (2001)は,語彙知識をForm,Meaning,Useの3大領域,9つの下位区分に整理した(p.27)。このうち,Form にはsound form(発音),written form(綴字),word parts(接辞等)が,Meaningにはform & meaning(語形と意味とのマッチング),concepts & referents(語の多義性),association(類義語・反義語・上位語・下位語等)が,Useにはgrammatical functions(品詞・文型パタン),collocation(共起語),constraints on use(言語文化的使用制約)などが関与する。Ishikawa(2008a)では,音韻処理と意味処理に着目することで,FormとMeaningの関 係の一端を明らかにしたわけであるが,Meaningは本来独立的なものではなく,Useと密接に関わっていると考えられる。そこで本研究では,Useの 中のcollocationに注目し,反義性判定課題と共起性判定課題という2種類の実験を新たに実施することで,両者の関係性の解明を目指す。

自由研究発表  第1日  会場5(F205) ① 13:10~13:40

教師の「指導」は学習者の中間言語再構築にどの程度影響を与えるのか
荻原 洋(富山大学)

本発表は昨年度の「レシテーションは学習者に何をインプットするのか」の継続研究である。昨年度の研究発表では、キーワードを自由に選 択させるレシ テーション学習において、キーワードの選び方と学習者の英語力との間に何らかの関係が認められることを示唆した。特に内容語をキーワードとするか機能語を キーワードとするかによって、学習者のタイプは分かれるようであった。そこで本研究では、キーワードを自由に選択させるのではなく、教師の「指導」により 選択の仕方を制限するようにした場合、レシテーションの仕方やその学習効果等に何らかの影響がでるのかどうかを調べてみた。普段の授業内での実践であり、 条件のコントロールが不十分であったり、被験者数が少なかったりという制約はあるが、得られたデータを丹念に検討することによって、教師の指導と学習の進 展との間の関係をいくらかでも推測できるのではないかと考えている。

自由研究発表  第1日  会場5(F205) ② 13:45~14:15

英語のプロソディー習得を目指したシャドーイング指導に関するアクション・リサーチ
三上 由香(大阪商業大学)

筆者は、2006年10月から12月まで、必修科目として英語を学習する大学1年生(英語を専攻としない学生28名)を対象として、 「学生が、英語 のプロソディを習得し、リスニング力を向上させるためにはどのような指導が必要か?」のテーマで、アクション・リサーチを行った。プロソディとは、「発 音、強勢 (ストレス)、抑揚、リズム、ポーズなど、話し言葉に含まれる各種の音声(音韻)要素の総称」(鳥飼他, 2003:22)である。今回のリサーチを通じて、英語のプロソディ、すなわち、英語の音声的特徴を習得させながら、英語を聞く能力も向上させることを目 指した音声指導を考えてみたい。

本研究では、①英語のプロソディの習得、②リスニング力の向上という2つの目標を達成するために、英語学習法としてのシャドーイングに 注目した。英 語教育においてシャドーイングが用いられる場合、リスニング力とスピーキング力の向上が主な目的とされる。鳥飼他 (2003)によると、シャドーイングの練習を行うことによって、英語らしい音とリズムを身につけることができ、その結果、英語の音のデーターベースが増 えることになり、リスニング力やスピーキング力の向上につながると考えられる。しかし、大学生を対象としたクラスの中で、英語のプロソディの習得に注目し て、シャドーイング指導を行った研究はほとんど見られない。そこで、本研究においては、リスニング力の向上のみではなく、英語のプロソディの習得も目指し て、授業の中でシャドーイングを活用した音声指導を実践した効果と問題点を明らかにしたい。

引用文献:鳥飼久美子・玉井健・染谷泰正・田中深雪・鶴田知佳子・西村友美(2003)『はじめてのシャドーイング』東京:学習研究

自由研究発表  第1日  会場5(F205) ③ 14:20~14:50

外国語学習における音声模倣能力に関する一考察
荒尾 浩子(三重大学)

言語習得において、模倣は紛れもなく一つの技能であることはすでに認められてきたことである。特に発音習得の過程においては模倣の役割 は大きく、そ の技能に長けていることは高い習熟度につながることが期待される。子供は、外国語を学習する際、発音習得において、成人学習者と比較して、その音声模倣能 力の高さから有利であることも推測されている。第二言語習得研究では、模倣能力を脳の柔軟性との関連でとらえた研究も多い。Yvonne (1999)の研究では、4歳から17歳の28人の日本人を対象に/r/と/l/を含んだ英単語のリストを聞かせ、それを模倣させる実験を行い、その結果 から年齢と模倣能力に相関関係はなく、脳の柔軟性が模倣能力とは関連していないという結論を導いている。また模倣能力は年齢ではなく、個人の才能の問題で あるとしている。本研究では、模倣の対象となる刺激語を被験者である日本人が、経験のない、馴染みのない言語にすることで、知識や経験に左右される恐れの ない純粋な音声模倣技能を測定することを試みる。それにより改めて模倣技能に関わる学習者の要因を探求したい。

自由研究発表  第1日  会場5(F205) ④ 14:55~15:25

音読メタ認知の変容について:音読発表の効果の検証
浅野 敏朗(明治国際医療大学)

本稿は、一定期間にわたる音読発表が、学習者の音読についての認識をどのように変化させるのかを検証しようとするものである。学習者の 側で、音読が 英語の学習上有効であるという認識が高まれば、このことは学習者の自律的な英語学習方略をより良いものに作り変えていくという効果があると考えられる。

浅野(2005)では、一定期間の音読トレーニングが学習者の音読メタ認知を向上させると言うことが確認されたが、その後、実験群と統 制群を設定してほぼ同様の検証を試みた浅野(2008)では、音読メタ認知の向上にあまり有効な結果は得られなかった。

本研究は、1)大学生の音読メタ認知について分析・考察を行うこと、2)一定期間の音読発表の実践により、音読メタ認知がどのように変 容したかを調査・検証すること、を目的とした。

1)については、「音読は英語の全般的な力をつけるのに有効である」とするものは75.4%を占めたが、「正しい発音やイントネーショ ンで音読する ことは苦手である」とするものが57.4%に上り、また、「正しく発音しながら英語の語順で意味内容を理解していくこと」には75.4%のものが困難を訴 えており、「音読が上手くなりたい」と答えているものは83.6%を占めた。

2)については、音読発表実践の前後で、『音読に関する認識調査』の全32項目中16項目において統計的に有意な変化が確認でき、音読 メタ認知力 (音読に関して肯定的で、英語学習に役立つと想定される認知力)を表すと考えられる 18項目中15項目で有意な変化が認められ、今回の一連の実践は音読メタ認知を促進する上で効果的であったことが検証された。

浅野敏朗(2005)「音読指導を検証する:授業実践に基づく予備的研究」『LET 関西支部研究収録』第10号 33-44頁
浅野敏朗(2008)「音読トレーニング効果の再検証」『中部地区英語教育学会紀要』第37号 113-120頁

自由研究発表  第1日  会場6(F206) ① 13:10~13:40

口頭表出活動においてリハーサルと練習が学習者の発話に及ぼす影響
藤田 卓郎(福井工業高等専門学校)

本研究の目的は、意味中心の口頭表出活動において、同じモードのリハーサルが学習者の発話に及ぼす影響、及び、1回の授業内で同じ活動 を繰り返し行 うことが、学習者の発話に及ぼす影響を、量的、質的に調査することである。工業高等専門学校1年生10名を対象とし、Show and Tell活動を行った。学習者はペアを代えながら、同じ活動を1時間中に5回行った。この実験の結果をもとにリハーサルと、同じ活動の練習が学習者の発話 の生産性、流暢さ、複雑さ、正確さ、及び、発話の内容に及ぼす影響を述べる。

自由研究発表  第1日  会場6(F206) ② 13:45~14:15

Communicative Language Teachingにおける "Prediction要素" の効用
林 敬泰(三重大学教育学部附属中学校)

平成16年度文部科学省教職員海外派遣研修にてイギリス・エクセター王立大学English Language Centerで半年間、英語実践教育プログラムを受講した。帰国後、その指導方法を基に三重大学附属中学校で3年間、Communicative Language Teaching(以下CLT)の授業実践を行ってきた。このレポートでは、CLTと「Prediction要素」の概要を説明し、指導方法とその効用に ついて考える。イギリスにおける英語指導方法は、CLTに基づいており、"Communication is a process." という概念が言語指導の大きな柱になっている。CLTでは、教える過程や学習の過程自体がコミュニカティヴであることが重要であり、 「Prediction要素」はプロセスの中の柱である。人がコミュニケーションを行う場合、常に相手や会話の場面・状況等を把握し、次にくる会話の内容 を予測・予想した上で発話を行っている。この予測・予想するプロセスをCLTでは、「Prediction要素」と呼んでいる。例として、次のような発話 を紹介する。相手が野球好きなのかどうかを予測・予想した上で「Wow, Matsuzaka at last pitched 1000 strikes!」と発話し、相手が東海岸出身者か予測・予想した上で次にくる会話を発話する。このような、実際のコミュニケーションのプロセスで行われ ているPrediction要素を、英語指導の中にも取り入れる方法とその効用を紹介する。

自由研究発表  第1日  会場6(F206) ③ 14:20~14:50

コミュニケーション能力を育成するためのタスクとその成果
宮下 智恵美(長野県松本市山形村朝日村中学校組合立鉢盛中学校)

中学生のコミュニケーション能力を伸ばすためにはどのような指導が必要か。これまでの課題を解決する方策として,インプットのあり方を 見直し,創造 的なアウトプットとしてタスクが活用できる。筆者は題材に関するTeacher Talkとreading materialsを授業に位置づけ,インプットが生徒の理解力や意欲,表現力にどう影響するかを調べた。また,コミュニケーション能力の構成要素である 談話能力,方略能力を伸ばすことをねらい,タスクにreading materialsやマッピング,プロセスライティングを取り入れた。本発表では,清泉女学院大学2年生を対象に行ったシナリオを用いた問題解決タスク, 昼食を話題にした方略タスクの実践例とその成果について述べる。

タスクを通し「伝えたい内容」と「自己の言語能力」の差に気づかせ,言い表せなかった部分を補足したモデルを与え,振り返らせてから再 度タスクを行 うという一連の活動により,表現力と意欲に向上が見られた。学生たちは聞いたり読んだりして触れた英文の中から,自分が必要とする語彙や表現を獲得しただ けでなく,表現する内容や発想についても刺激を受けていた。その様子はプロセスライティングで学習を重ねるごとに,英文の正確性や英文量,内容が向上した ことからも伺える。これまで表現活動において,自分が言いたいことを表すための語彙が浮かばずに戸惑う姿が多く見られたが,マッピングを活用し,読み取っ た内容をキーワードで整理させ,それをヒントに英文を書かせたことで語彙のつまずきが減り,単語をどうつなげて英文にしたらよいかreading materialsをより意識して読む姿も見られた。以上のような実践について発表し,皆様からご助言を頂きたい。

自由研究発表  第1日  会場6(F206) ④ 14:55~15:25

SELHi校におけるタスク中心シラバスの開発ー理論と実践ー
宮本 由美子(長野県上田染谷丘高等学校)

平成17年度から19年度の3年間、SELHi指定校において研究開発課題の「英語による論理的な自己表現力の育成のためのタスクを中 心としたシラ バス」に取り組んできた。タスクシラバスは、人間はタスクを遂行するために言語を使用するという考えに基づいており、最近の言語習得理論で隆盛なものの一 つとなっている。しかしながら、検定教科書は現在も文法シラバスにそって編集されているものが主流である。こうした教科書の持ち味を生かしつつ用い、どの ようにfocus on meaningやメッセージ中心のタスクを授業に組み込むことができるか、またどのようなタイプのタスクが選定でき、配列ができるか、3年間の実践をもと にタスク中心シラバスを開発した。タスクシラバスのデザインにあたり骨子としたのは、内容(トピック、タスクタイプ)、方法(教師と学習者の参加形態)結 果(成果、スキル)である。タスクシラバスの開発は、卒業後の到達目標からバックワード・デザインして、どのようにタスクを組み込んでいくかという授業計 画(コースデザイン)と、授業展開の2つの観点から考えられるが、その限界についても考察する。

自由研究発表  第1日  会場7(P103) ① 13:10~13:40

The role of Japanese Teachers of English (JTEs)- students' views about English classes by JTEs
関 静乃(静岡大学)

This presentation will discuss the results of a questionnaire survey of 128 college students on what they think about Japanese teachers of English using English in their English class. As a result, about 95% of the students agree with the idea that JTEs use English in class. The purpose of the survey is to find out what students expect JTEs and find out the strengths and weaknesses of JTEs. The survey consists of 6 questions: 1) Do you agree with the idea that JTEs conduct classes in English, and why? 2) How much of the class time do the students want JTEs to use English, and why? 3) In what situations do the students want JTEs to use English, and why? 4) In what situations do the students want JTEs to use Japanese, and why? 5) Do you think speaking English with JTEs helps you improve your English? 6) Do you think speaking English with your classmates helps you improve your English? The presenter will report the students' reactions to each question. Considering students' views, Japanese teachers of English can play a better role in teaching and should take advantage of being both a native speaker of Japanese and non-native speaker of English.

自由研究発表  第1日  会場7(P103) ② 13:45~14:15

Assistant Language Teachers' Roles and Duties: Official documents versus ALT self reports
Birch, Gregory(清泉女学院大学)

Through the Japan Exchange and Teaching Programme (JET Programme), over 48,000 people have come to Japan to participate in international exchange and foreign language education (JET Homepage). A majority of the participants are recent university graduates with no teaching education or experience and work as assistant language teachers (ALT) (Inoi et al. 2001). As a result, the English as a Foreign Language (EFL) training that most participants receive is through conferences sponsored by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology and organized through each prefectural Board of Education. The author, a teacher trainer for such conferences in Nagano Prefecture, conducted an exploratory survey to determine how qualified the ALT participants are, their responsibilities, and the ALTs' perception of their role and the role of the Japanese teachers of English (JTE) with whom they teach. The survey was followed by interviews and lesson observations to clarify and contextualize survey results. During this presentation, the results of questionnaires completed by all 39 senior high school JET-sponsored ALTs employed in Nagano Prefecture will be compared with previous studies and official documentation to illustrate how actual ALT responsibilities differ from the job description, the contradictory views ALTs have of their role and also of the JTEs' role, and the implications for future training programs.

Inoi, S., Yoshida, T., Mahoney, S., & Itagaki, N. (2001). An inquiry into JTE and ALT/AET beliefs about English Education. Tokyo: Monbukagakusho.

自由研究発表  第1日  会場7(P103) ③ 14:20~14:50

Team-Teaching: Voices from the Classroom
Fujimoto-Adamson, Naoki(諏訪東京理科大学)

This study investigates team-teaching between a Japanese teacher and a native-speaker Assistant Language Teacher (ALT) in an English classroom in a junior high school in Japan. Such teacher co-operation has spread rapidly in Japan after the Japan Exchange Teaching (JET) Programme was launched in 1987, bringing many young university graduates from English speaking countries to work at Japanese schools. However, JET was instigated not purely on educational grounds, but also on global, economic and political factors affecting Japan at that time (McConnell, 2000).

Analysing key research conducted into team-teaching, there have been various types of studies, yet little empirical research examining actual classroom practice exists. In order to address this practical need in the research, I have conducted this current classroom-based study. For this purpose, the concept of an "intrinsic case study" (Stake, 1995) was adopted to reveal "telling cases" (Mitchell, 1984) of pedagogical practice, rather than seeking a typical case. As part of the investigation, I visited a junior high school located in Nagano Prefecture and observed one team-teaching lesson. Afterwards interviews were conducted with all direct stake holders of team-teaching, the Japanese teacher, the ALT and their students, to discover more about the context of the lesson. Classroom interaction was analysed based on a discourse analytical approach and "semi-structured" interviews (Drever, 1995) were conducted with the participants.

The results of the triangulated methodology have revealed that although there were some merits to team-teaching, it was not always performed effectively. Looking back though the history of English language education in Japan, it is clear that the JET Programme is one instance of the autocratic introduction of educational policy, yet to improve and sustain the programme in the long-term, it is necessary to encourage local investigation, including accessible forms of research, into its practice. This study in itself represents a potential example of such an investigation.

自由研究発表  第1日  会場7(P103) ④ 14:55~15:25

メンタリングによるアクション・リサーチ実践研究指導者育成の試み
三上 明洋(近畿大学)

筆者は、アクション・リサーチ実践研究指導者(メンター)の育成を図るために、メンタリングの手法を活用した教員研修システムの開発を 試みている。 本教員研修システムでは、すでにアクション・リサーチを実践した経験のある英語教員(メンター候補者)が、その経験の全くあるいはほとんどない英語教員 (メンティ)と継続的・定期的に交流を図り、アクション・リサーチの実践を支援すると同時に、その経験を通して、メンターの育成を効果的に図ることを目指 す。 2007年9月から2008年3月までの約6ヶ月間、本教員研修システムを活用して、大学英語教員2名からの協力を得て、メンタリングの実践を試みた。そ の際、メンター候補者は、すでにアクション・リサーチの実践経験があるとは言え、他のリサーチ実践者を支援することには不慣れであるため、筆者がコーディ ネーターとなり、メンターとメンティのメンタリングをモニターし、メンタリングが円滑に進められるよう必要な助言・支援を提供した。本研究では、コーディ ネーターの観点からこのメンタリングの試みの経過と結果を報告するとともに、上記のメンター候補者とメンティを対象に行ったアンケート調査の結果を基に、 本教員研修システムの効果と問題点を明らかにする。

自由研究発表  第1日  会場8(P104) ① 13:10~13:40

Correlation Between ESL Proficiency and Arithmetic Ability: A Preliminary Study on the Correlation Between the Scores on the Minimal English Test and the Time to Complete the 100 Square Calculation
Maki, Hideki (Gifu University), Kasai, Chise (Gifu University), Hasebe, Megumi (Gifu University), & Goto, Kenichi (Gifu University)

As a warm-up to a university English class, we introduced the 100 Square Calculation (100 Masu Keesan), developed by Hideko Kageyama, at the beginning of class. The 100 Square Calculation is a drill, and contains 100 questions on addition, subtraction, multiplication, and division made by the random numbers put in the 10 rows and 10 columns. The learners are asked to do the calculation as fast and accurately as possible, and they recorded the time to complete it. During this process, we noticed that those who had higher ESL proficiency finished each drill faster than those with lower ESL proficiency. We therefore hypothesized that there should be a certain correlation between ESL proficiency and simple arithmetic ability, such as addition and subtraction. In this research, then, we investigated whether there would be a correlation between the scores on the Minimal English Test (MET), developed by Maki et al (2003), and the time to complete the questions on the 100 Square Calculation Addition and Subtraction. The MET is a five-minute English test, and requires the test taker to fill a correct English word into each blank space of the given sentences, while listening to the CD. The Maki group has found statistically significant relatively strong correlations between the scores on the MET and the scores on other widely-used ESL tests, such as the University Entrance Examinations (English Part) from 2002 to 2007. Through a simple regression analysis, we found statistically significant moderate (negative) correlations between the scores on the MET, and the time to complete the 100 Square Calculation Addition (r=.42, n=208, p<.05) and the time to complete the 100 Square Calculation Subtraction (r=.52, n=208, p<.05). Also, we classified the data (n=208) into three level groups (low, middle, and high) based on the time to complete the 100 Square Calculation. Through an ANOVA, we found statistically significant differences in both the 100 Square Calculation Addition and Subtraction among the scores on the MET by the three level groups. These results suggest that our initial hypothesis was correct, that there should be a certain correlation between ESL proficiency and simple arithmetic ability.

自由研究発表  第1日  会場8(P104) ② 13:45~14:15

On Japanese ESL Learners' Perception of the Phonemes /l/ and /r/
Umezawa, Toshiro (Gifu City Women's College), Maki, Hideki (Gifu University), Kasai, Chise (Gifu University), Hasebe, Megumi (Gifu University), Takahashi, Kazushige (Gifu University), Goto, Kenichi (Gifu University), & Kashimura, Mayu (Gifu National College of Technology)

It has been widely observed that it is extremely hard for Japanese ESL Learners to pronounce and distinguish the sounds /l/ and /r/ in English (MacKain, Best and Strange (1981) and Takagi and Mann (1995), among others). This is because no similar sound exists in Japanese, and thus, the learner finds it difficult to make a distinction between them (Yamada and Tohkura (1992)). In this research, we investigate which phoneme /l/ or /r/ is harder for Japanese ESL learners to identify by providing a perception task to them. In addition, we investigate whether there is a difference in the perception task between word-initial /l/ and /r/ in words which constitute minimal pairs (such as light and right) and between word-initial /l/ and /r/ in words which do not (such as like and run). For these purposes, we developed the LR Test (LRT). The LRT is a 5-minute test, which requires the test taker to fill an alphabet [l] or [r] in the initial position of the target word, while listening to the CD. There are 80 target words in total, 40 of which start with [l], and the other 40 of which start with [r]. Also, 10 words in each group constitute minimal pairs. We administered the LRT to university students in Japan, and analyzed the data by a two-way layout ANOVA. We classified the target words into 4 groups (L1/R1: the phonemes /l/ or /r/ of the minimal pairs, and L2/R2: the phonemes /l/ or /r/ of the non-minimal pairs). The rate of correctness of each group is: L1=.66, R1=.80, L2=.79, and R2=.83. Through the analysis, we found a statistically significant difference (1) between the phonemes /l/ and /r/ (n=145, p=7.71E-18) and (2) between the words which constitute minimal pairs and those which do not (n=145, p=4.28E-14). Furthermore, we found a statistically significant difference among the 4 groups (p<.05). These results clearly indicate that for Japanese ESL learners, word initial /l/ of the words which constitute minimal pairs is the hardest and word initial /r/ of the words which do not constitute minimal pairs is the easiest to identify.

自由研究発表  第1日  会場8(P104) ③ 14:20~14:50

有声リハーサルに見られる潜在時間について
建内 高昭(愛知教育大学)

本研究の趣旨・目的
認知した内容をリハーサルすることは、記憶の保持における主要な要因の1つであると記憶研究において示されている。リスニング研究における音韻情報の保持 に関わりさまざまな実験方法が用いられ認知及び理解の促進に関わる研究が行われてきている。

第二言語学習者を対象にしたリスニング研究においては内容理解や認知ストラテジーに関わり研究が行われてきている。特に多くのストラテ ジー研究が事 前リスニングに関わる影響、あるいはリスニング最中に関わる影響について研究が行われてきている。しかしリスニング直後における音韻保持、特に残差記憶に 関してはほとんど研究対象とされてきていない。リスニングはリーディングとは異なり、戻り読みに対応するような活動は行えない。しかし、聴いた音韻痕跡を 再び活性化する方法のひとつとしてリハーサルが考えられる。そこで本研究では有声リハーサルデータ及び潜在時間を研究対象とする。EFL学習者を対象にし て音声呈示から構音までの潜在時間を分析することは、リスニングにおける音韻保持の役割を捉える端緒となるばかりでなく、より広範に脳内機構まで視野に収 めた実験パラダイム作成に寄与するものである。

研究課題
1. 日本人EFL学習者を対象にした有声リハーサルにおける潜在時間に着目し、潜在時間に見られる近接群と間遠群との特徴はどのようなものか?
2. 潜在時間と発話データとの関わり、潜在時間と学習者の習熟度との関わりにはどのような特徴が見られるのか。

研究対象
日本人大学生 22名

調査手順
ヘッドフォンにより英語による聴覚呈示を行い、それらの音声をICレコーダにて録音する。またCELTを用いて英語リスニング習熟度を測定する。

分析方法
被験者による有声リハーサルの潜在時間を測定する。また発話データに見られる特徴を分析する。

自由研究発表  第1日  会場8(P104) ④ 14:55~15:25

視覚認知型英語音声聴覚イメージを利用した効果的学習方法の構築
大森 裕實(愛知県立大学)・鬼頭 修(愛知大学)

本実践型調査研究においては、「英語らしい言語音の習得」に問題点を特化して、臨界期を過ぎた外国語学習者が「認知し、理解し、納得し たうえで、み ずから進んで学習する心的態度を涵養する」にはどうしたらよいかを考究し、自律的学習の補助及び強化となるような視覚認知型の音声聴覚イメージを学習者が 獲得できるような「学習モデル」を構築することを目標として「スピーチ・クリニック」(音声学実習室)を開設し運営した2ヶ年度の結果を報告するものであ る。平成18年度には、音声分析ソフトMulti-Speech 3700の波形表示を利用して、本務校の大学1年生を対象に、実験群と統制群を形成して、英語文における単語の強勢の置き方を中心に学習を進め、それが学 生の英語力(特に、リスニング能力)の向上に効果的影響を与えているかどうかについて「量的分析」を試みた。また、平成19年度には、「ある程度のまと まった音連続単位」に焦点化して、波形表示に加えて強勢曲線(Stress/Pitch Contour)を表示して、超分節音素の獲得がどの程度まで効果的に行なわれるかについて調査した。そのために、音声分析ソフトWave Surferを利用した。この場合は、上級学習者と中級学習者を各1名抽出して、その学習データに「質的分析」を試みる手法を採った。

最近2年間の調査研究の結果、聴覚情報のみで「英語らしい言語音の習得」を目指す学習方法よりは、視覚情報を伴なうほうが有効であるこ とは実証され た。そして、それはすでに聴覚イメージで脳内処理のできる上級学習者の場合より、何らかの視覚的補助情報を伴なって脳内処理を促進させる初級・中級学習者 にとって効果的であることを示唆している。つまり、このことは英語を主専攻としない中位クラスの一般的学習者に対応できる汎用性の高いプログラム構築が可 能であることを意味している。

自由研究発表  第1日  会場9(R205) ① 13:10~13:40

英語構文テキストを用いたListening学習の実践研究
新谷 敦子(愛知県立丹羽高等学校)

本発表は、高校生Listening初期学習者を対象とした英語構文テキスト付属の音声CDを用いたListening学習の実践研究 である。対象 者は発表者が担当した高校2年生Writingの生徒理系上位クラス21名、文系普通クラス38名である。実施期間は8月末から3月半ばまでの約6ヶ月間 である。生徒は、Writing副教材として英語構文テキストおよび付属音声CDを自習することになっていた。英語構文の定着を目的として授業中に小テス トを実施することは学年で統一されていたが、授業中のテキスト使用については、担当教員にまかされていた。週に2回実施した小テスト前の数分間で、テキス トを用いたReading & Repeating Practice およびCDを用いたDictation Practiceを約6ヶ月間実施し、英語構文の定着を図ると同時にListening力の向上を図った。新学期当初は、英語構文の定着を図るため Reading & Repeating Practiceを小テスト前に実施しており、小テストおよび定期テストでの英語構文を書く問題では、一部を除いて、ほぼ全体的に定着していると判断でき る答案であった。しかし、一学期末のアンケート調査から、成績上位者でもListeningを苦手とする生徒が比較的多く、Listening対策の必要 性はわかっていても、なかなか家ではできないので学校でのListening対策を要望していることがわかった。一方、本年度はListening対策を 他の授業中に実施する予定が無いことも聞いていた。生徒の実情および本年度2学年の英語授業方針からみて、独自に授業でListening 対策を取り入れる必要性を感じた。そのため、授業進度に影響が無い時間の範囲内で、英語構文の定着を図りながらListening力を高めるための方策を 探った。Listening力を向上させるには、内容の分かった英文を毎日短時間集中して聞き続けることが有効であるため、2学期から、毎回の小テスト前 の数分間Reading & Repeating Practice に加えてDictationを実施することとした。センター試験リスニング過去問テストおよびアンケート調査も実施した。考察結果の詳 細は当日発表する。

自由研究発表  第1日  会場9(R205) ② 13:45~14:15

英語を内在化させる授業実践
鈴木 基伸(豊田工業高等専門学校)

本発表では、まず、本発表者の勤務校の学生の英作文におけるerrorの例を通して、英語の「内在化(=自分自身のものとして取り込む こと)」がい かに不十分であるかを指摘する。次に、該当学生に対して行なった英語内在化のための授業実践例を数例紹介する。最後に、英語を内在化させる意義についての 私見を述べる。フロアの先生方からのご助言、ご意見を頂戴できれば幸いである。

自由研究発表  第1日  会場9(R205) ③ 14:20~14:50

Consciousness-raising taskを用いた文法指導の効果
内藤 元彦(越前中学校)

本研究の目的は、3種類のconsciousness-raising instructionによる文法指導の効果を比較し、分析することである。公立中学校の2年生77人を対象とし、意識昂揚タスク (consciousness-raising task, henceforth, CRT)グループ、明示的文法指導グループ、CRTと明示的文法指導のコンビネーショングループの3グループに分けた。CRTグループでは、学習者自身で 目標形式についてのルールを発見し、学習するタスクを行った。明示的文法指導グループでは、教師が目標形式のルールを明示的に説明し、学習者は説明された 内容をプリントに書いていくタスクを行った。コンビネーショングループの学習者は、CRTグループで行われたタスクを行い、その後、教師による明示的文法 指導を受けた。それぞれのトリートメントは1時間の授業で行われた。指導の効果は直後テストと1週間後のポストテストで調査された。この実験結果をもと に、CRTを用いた文法指導の効果を述べる。

自由研究発表  第1日  会場9(R205) ④ 14:55~15:25

Error Correction in Dialogue Journals
山田 晴美(仁愛大学)

For the last three years, the presenter has been using 'journal writing' activity in her 1st year pre-intermediate level general English language course at university. The purpose is to have students use English for authentic communication with the teacher (the presenter), based on the Interaction Hypothesis that states that 'negotiation for meaning, and especially negotiation work that triggers interactional adjustments by the NS or more competent interlocutor, facilitates acquisition because it connects input, internal learner capacities, particularly selective attention, and output in productive ways (Long, 1996).' This aim is explained to the students at the beginning of each year. The teacher responds and comments on the content of every journal entry.

A golden rule in the use of journals in classrooms is that error correction should be kept to a minimum and corrections should not be made at the expense of genuine communication. However, some studies have shown that students actively want their work to be corrected. In 2005 and 2006, grammatical mistakes by the students were not corrected. In 2007, the teacher corrected almost all errors in red, in addition to her responses to the content. This presentation will compare the (uncorrected) journals written in 2006 and those written in 2007, which were for the most part corrected. The language data in the journals and questionnaire results will be analysed. We attempt a study on the effects of error correction in journal writing.

自由研究発表  第1日  会場10(R206) ① 13:10~13:40

「until」と「まで」に関する考察
大野 千鶴(静岡大学)

「英語圏からきて一番まごつくのは、日本語の『まで』の使い方です。『月曜まで忙しい』といった場合、日本語では<月曜 日一杯は忙しい >という意味でしょう。ところが英語では<日曜の午後十二時までは忙しい。したがって月曜日はひまです>とい う意味になります。そのへ ん解明してくださいよ」と、井上ひさし(1996)は、京都在住の友人、作家のロジャー・パルバースから解けそうもない宿題を出されてしまったと述べてい る。

まず、最初に言えることは、『まで』の語法が曖昧性を含んでいるということである。一方、『until』の語法も否定的含意、社会的文 脈、慣習が働いた場合、解釈が変わってくるということもある。

本研究では、上述したことに加え、『まで』の解釈が『until』を解釈するうえに影響を与えている(転移がみとめられる)ため、日本 語母語話者と 英語母語話者間に解釈のズレが生じ、コミュニケーションがうまく図れないのではないかということを日英語比較することにより考察する。

それにより、L1日本語英語学習者がそのような曖昧性を含む語法に出合った場合、どのように対処し、意思疎通を図っていったらよいのか 提案する。

自由研究発表  第1日  会場10(R206) ② 13:45~14:15

認知文法の観点から、加算名詞/不可算名詞と動作動詞/状態動詞の教え方を検討する
今井 隆夫(愛知みずほ大学)

こ数年の認知文法の研究成果からは、名詞の加算・不可算というのは、名詞によって決まっていることではなく、加算・不可算という概念は 単に名詞の用 法であり、ほとんどすべての名詞が、捉え方次第では、加算にも不可算にも振る舞うことができるといったダイナミックな捉え方がされるようになってきた。例 えば、 Langacker(2008: 144)では、By mashing a dozen potatoes, you get enough potato for this recipe.という例を挙げ、potatoという名詞が加算名詞としても不可算名詞としても振る舞うことが指摘されている。

また、加算用法と質量(不可算)用法を決める動機付けとして、次の3つの要因が挙げられている。

① bounding (bounded/unbounded)
② homogeneity(homogeneous/heterogeneous)
③ contractibility(expansibility/replicability)

つまり、加算名詞は、境界があり内部が不均質で、増大させるには複製する必要がある。一方、不可算名詞は、境界がなく内部は均質であ り、伸縮自在であると捉えられる。

さらに、この名詞の加算・不可算という区別が並行的に、動詞の動作・状態にも当てはまるという指摘がされている。つまり、動作動詞は、 境界があり内 部が不均質で、増大させるには繰り返す必要がある。一方、状態動詞は、境界がなく内部は均質であり、伸縮自在であると捉えられるのである。 Langacker (2008: 149)では、

(a) Sam {*lies/is lying} on the bench right now.
(b) Belgium {lies/*is lying} between Holland and France.

という例を挙げ、安定性が、一時的なものか永続的なものかのいずれに捉えられるかのよって、同じ動詞が、動作動詞として振る舞うか(進 行形という文 法現象が可能なのに対し、単純現在形が不可能)、状態動詞として振る舞うか(進行形という文法現象が不可能なのに対し、単純現在形が可能)が決まることが 述べられている。

本発表では、これらの認知文法の考え方に基づいて、名詞の加算・不可算と動詞の動作・状態のよりわかりやすい教え方を検討したい。

【参考文献】Langacker, R. W. (2008). Cognitive Grammar - A Basic Introduction: Oxford University Press.

自由研究発表  第1日  会場10(R206) ③ 14:20~14:50

縦書き左行送り批判----文字書き順法則から
加藤 主税(椙山女学園大学)

横書き文字の右送り、下行送りは日英語共通であるが、日本語縦書き文は左行送りする。この書記法は種々な矛盾を含む。

1. アンケート調査結果より縦長円は左回りで、横長円は右回りであったが、その理由は原則を立てることによって、説明できる。
2. 文字を構成する線は原則的に、縦線、横線、左上右下斜線、右上左下斜線の4種であるが、原則は、1.上原則(縦線、斜線)、2.左原則(横線、斜線)、 3.左上最近始点原則(縦線、横線、斜線)、4.つなぎ原則(縦線、横線、斜線)、5.長原則、の5種。
3. 4種の線が混在する記号は原則が衝突する。
1.◯  上原則、左原則の衝突、2.× 左上最近始点原則、左原則、3.縦長円 左上最近始点原則、上原則、長原則、つなぎ原則、4.横長 円 左上 最近始点原則、左原則、長原則、つなぎ原則、5.△ 左上最近始点原則、上原則、つなぎ原則、6.□ 上原則、左原則の衝突、7.+ 上原則、左原則の衝 突
4. 日英文字の調査結果と原則衝突
1.「A」上原則とつなぎ原則の衝突、2.「N」上原則とつなぎ原則の衝突、3.「M」上原則とつ なぎ原則の衝突、4.「F」上原則と左原則の衝突、5.「E」上原則と左原則の衝突、6.「Q」上原則とつなぎ原則の衝突、7.「T」上原則と左原則の衝 突、8.「X」左上最近始点原則、9.「ま」上原則と左原則の衝突、10.「も」左原則と長原則の衝突
5. 日本語横書きには、1.進行方向原則(見かけ進行方向原則)、前方原則、2.縦長看板 が存在する。
縦書き右行送りには次のような問題点がある。1、左原則違反、2.確認不可能、3.汚染、4.行送り支障、5.歴史的書式法の変化、6、漢字書き順の問題 点、歴史的例外、7.書籍問題、8.縦書き、横書き混在書式

自由研究発表  第1日  会場11(R210) ① 13:10~13:40

中学生の語彙習得についての考察
高塚 由佳利(静岡大学(院))

本発表は、中学生の語彙学習についての様々な疑問に対して、先行研究ではどのように定義され、その定義を中学生に対して効果的に利用す るにはどうしたらよいかを提案しようとする研究である。

中学校学習指導要領(2000、文部科学省)によると、中学校3年間に学習しなければならない必修語句は約100語とされている。それ に教科書で扱 う語を加えると約900語程度である。必修語句は機能語のみで、内容語は含まれていない。生徒たちは、おもに教科書で語彙を学習する。それら学習した語彙 のなかで、実践的コミュニケーション能力育成をめざしたコミュニケーション活動でどれくらいの割合で使われているのだろうか?また、それらの語彙で、表現 したいと思う内容を十分に表現することができているのだろうか?このように日頃の授業実践において語彙について考えるだけでも様々な疑問が浮かぶ。それら の疑問を、以下の項目に絞って更に考察してみたい。

中学生は、

  1. どのような方法で語彙を身につけているのか(語彙学習ストラテジー)
  2. 一度学習した語彙を長期にわたって保持していくためにはどのような支援を生徒にしていけばよいのか(語彙学習ストラテジー)
  3. 語を知っているとは、どういうことなのか(語彙知識)、
  4. 先行研究で言われている語彙知識のどのレベルに到達していればよいと考えるか(語彙サイズ)
  5. 教科書で学習する単語は、生徒の発表語彙とどのくらいの関連性があるのか、また、発表語彙として必要な語彙はどのようなものがあ るのか(受容語彙と発表語彙)

以上5点について先行研究でどのように解明されているのか、先行研究から得た方法をどのように改良すれば、実際の教育現場で効果的なの かについて、研究の中間段階だが発表したいと思う。

自由研究発表  第1日  会場11(R210) ② 13:45~14:15

語彙学習方略の効果-中学2年生の場合-
河合 創(福井大学附属中学校)・橋本 秀徳(森田中学校)

第二言語学習者にとって語彙学習は避けては通れないものであるとともに、多大なる労力を要するものである。そのため、近年語彙を効率 的、効果的に学習・指導するために、語彙学習方略が注目を浴びてきている。

本研究では、日本の中学校において、単語リストを使用した認知方略、社会的方略の2つが語彙に与える効果を測定することを目的としてい る。認知方略 は、単語を例文とともに覚えるというものであり、単語リストは例分ありと例文なしの2種類が作成された。また、社会的方略は単語リストを使用したペアワー クが選ばれた。被験者は、福井県内の中学生3クラス119名が対象となり、クラスごとに異なる2つの学習方略を使用した。それぞれの被験者群は、事前テス トを受けた直後、質問紙に回答した。その1週間後、授業で学習方略を使用し、直後テストを受けた後、質問紙に回答した。さらに1週間後、遅延テストに解答 した。分析結果は大会当日に発表する。

自由研究発表  第1日  会場11(R210) ③ 14:20~14:50

産出的自己関連付けの語彙学習における効果
紺渡 弘幸(仁愛大学)

多くの心理学研究において、記憶を促進する自己関連付けの効果(the self-reference effect)が報告されている。本研究はこの自己関連付けの語彙学習における効果とその応用の可能性を探ろうとするものである。

学習者にターゲット・ワードを含む例文の意味を理解させた後、その内容が自分に当てはまるかどうかを答えさせる受容的な自己関連付け課 題を用いた研 究では、自己関連付けを行わない場合と比較して、その学習効果(ターゲット・ワードの記憶およびその保持)に差異が見られなかった。本発表では、学習者に 自己に関することをターゲット・ワードを用いて書かせる産出的な自己関連付け課題を用いて行った研究の結果を報告し、その語彙指導における有効性を検討す る。

自由研究発表  第1日  会場11(R210) ④ 14:55~15:25

英語「名セリフ」の使用が高専学生の語彙・文法学習に与える効果
吉田 三郎(福井工業高等専門学校)

本研究は、学生になじみ深いと思われるアニメや漫画の主人公たちの「名セリフ」を語彙・文法指導のための定義文に使用することの効果を 記銘度と動機 づけの観点から検証したものである。語彙記憶に関しては、Craik and Tulving (1975)等で、処理の深さに加えて精緻化(elaboration)の度合いが影響していることが実証されていたり、自己関連効果 (Self-reference Effect)も記銘度を高める際に有効であると検証されているが、これらの一連の実験は英語母語話者を被験者とした偶発的記憶を検証したものであり、日 本人の英語学習者の教室内での意図的な学習活動とは次元を異にするところも大きい。

本研究ではアニメやドラマ、漫画の主人公たちの台詞の英訳(「名セリフ」)を用いた例文と、学習英和辞典の用例として用いられている例 文(「通常例 文」)とで、目標語の記銘度にどのような差が生じるかを検証するため、直後と1週間後、2週間後に単語意味チェックと穴埋め再生テストを行った。また、こ れと同様の実験パラダイムでやや複雑な文法・構文の暗唱実験も行った。その結果、語彙の記銘度に関して「名セリフ」を用いた例文の方が、遅延テストの平均 値において部分的であるが統計的に有意な差が見られた。更に、定期試験の語彙テストで通常の問題と同等のレベルで出題したところ、総得点と語彙テスト部分 の相関度においても特徴的な違いが見られた。

その後被験者にアンケート調査を行い、同一の目標語や構文の暗唱に関して動機づけの観点から調査を行ったところ、「名セリフ」を用いた 例文の方が被 験者の動機づけを高めることが示された。その原因としては、一つには「名セリフ」の持つ情意的な側面が学習意欲の点でも、精緻化の点でも影響を与えている ものと思われる。また今後は「自己関与」を高めた文法学習指導への発展も考えられる。

自由研究発表・実践報告 第2日目(6月29日)

自由研究発表  第2日  会場1(F101) ① 9:25~9:55

中学1年生における英語能力の性差の検証 -小学校英語研究開発校出身者と非研究開発校出身者の比較-
福智 佳代子(姫路獨協大学)

小学校英語活動は,平成20年1月,『教育の機会均等の確保や中学校との円滑な接続等の観点』から,『外国語活動を義務教育として小学 校で行う』と する学習指導要領等の改善についての答申案が発表され,2011年義務教育として全国で実施されることになった。このような状況下で研究開発校として 1997年から10年間英語活動を行ってきた小学校と,18年度から年間35時間の英語活動を始める小学校及びこれらの児童が進学する中学校1年生を対象 として,児童英語検定テスト,ブロンズ・シルバー・ゴールドの各テストを使用して「表現及び語彙における理解度と記憶の定着度」を中心に検証を行った結 果,研究開発校における小学校英語活動を通じて,背景や場面などから,慣用表現・定型表現の基礎,すなわち場面の内容を理解する力や表現の機能を理解する 力を身につけたのではないかと考えられること,理解できる語彙,特に動詞に差が認められることが明らかになっている(福智, STEP BULLETIN, vol.19 2007)。 本研究では,さらにこの調査研究の結果から,生物学的な「ヒトの性」による性差"sexual distinction",および,成長していく過程で「社会的・文化的に形成される」社会的性差"gender difference"が,言語能力の性差にいかなる影響を与えているかについて,小学校英語活動とそれに続く中学校英語学習の調査結果より考察を試み た。正答率及び分散分析で有意差が認められる問題について,研究開発校・非研究開発校間における男女差の比較を行った結果,研究開発校・非研究開発校共 に,数値に差異はあるが,正答率パーセント及び分散分析において,女子の方が男子より優位であるという「性差」が認められた。

自由研究発表  第2日  会場1(F101) ② 10:00~10:30

性格要因が小学校の学級集団形成及び英語活動に与える影響 --- Q-Uを活用した先行研究 ---
佐藤 博晴(山形県立米沢女子短期大学)

英語学習に限らず、全ての教科学習の成功の根底にあるのが、規律の取れた学級経営であり、発言を促進させるような、また間違いを認め合 えるような温 かで支持的雰囲気を持った学級風土作りである。特に、教科ではなく、歌やゲームなどを通しての言語活動が中心となっている小学校の英語教育においては、他 教科以上に上にあげたような学級経営や雰囲気作りが学習の成果に大きな影響を与えるように思われる。

本研究は、学級の雰囲気や個々の児童の状態を客観的に把握するために開発されたQ-U質問紙と児童の性格要因を12の因子から詳細に診 断することが 可能なYG性格検査を用い、学級の状態・学習者の内的要因・英語学習への取り組みという3者の関係を解明するために計画されたものである。被験者数が少な く、また、性格因子に関しては外向性・内向性に係る2因子しか取り上げられないなど今回の調査は先行研究の域を脱し得ないが、高い外向性と適度なリーダー シップを持ち合わせた児童が学級生活満足群を形成する一方で、社会的外向性もリーダーシップも低い児童が学級生活に不満なグループを形成することなどが分 かった。また、先行研究等で報告されているように、本調査でも学年が上がるごとに英語学習に対して否定的な態度をとるようになっていったが、高学年になっ ても英語学習に肯定的な態度をとる児童の多くは学級生活満足群にいることも明らかとなった。

自由研究発表  第2日  会場1(F101) ③ 10:35~11:05

小学5年生、6年生の英語熟達度調査
白畑 知彦(静岡大学)

小学校3年生より、教室環境で英語を学習してきた子ども達が、4年後の小学6年生修了時点で、どのような特性を持つ英語能力を身につけ ているのか、 筆者が関わっている小学校に依頼し実験をおこなった。同時に、同じ小学校で3年生から3年間英語を学習してきた小学校5年生にも同一の調査をおこなった。 両者の結果を分析し、比較することで、教室環境での小学生の英語能力の一部を知ることができよう。今回調査する「小学生の英語能力」とは、「質問者の発す る英語を聞いて、その質問内容を理解し、かつ相応の返答または反応ができる能力」を意味する。4年間の英語の授業時によく使用された英語表現を実験者が発 問し、それらの英語の意味がどの程度適切に把握でき、かつ、適切に反応できるようになっているのか調査した。

英語活動をおこなっている多くの小学校では、文部科学省からの要望もあり、相手と積極的にコミュニケーションを取ろうとする態度面の育 成に最も力を 注いでいる。このような方向性は、現在の日本の状況を考慮すると間違った方向ではないだろう。しかし、一方で、4年間で140時間もの英語学習の時間があ れば、6年生修了時点で、何らかの「英語力」が身についていても決して不思議ではない。

では、どのような英語能力が身につく可能性があるか。その一部と考えられるものは、教師の発する英語の意味を、その発せられる文脈も含 めて、発話全 体の音の連続を頼りに、発話の趣旨を捉えようとする能力であろう。そのような観点を踏まえて、本調査の採点基準は、学習者が英語発話全体の意味を適切に捉 えられているかどうかに焦点を置いた。

結果として、当該小学生達は、かなり高い割合で調査項目に正答を得ることができ、小学生でも本研究で調査した類の「英語力」を身につけ られることが判明した。当日の発表では、実験方法と結果、そして問題点を詳しく議論したい。

自由研究発表  第2日  会場1(F101) ④ 11:10~11:40

自ら学ぶ姿勢を育てる工夫を取り入れた小学校英語活動:公立小学校2校での質問紙調査と授業実践の結果から
大和 隆介(京都産業大学)・津田 ひろみ(立教大学(院))・木村 隆(椙山女学園大学)・カレイラ松崎 順子(東京未来大学)・廣森 友人(愛媛大学)

自律学習能力を育てる方策として、近年、言語教育において、学習ストラテジー指導が大きな注目を集めている(O'Malley & Chamot, 1990; Macaro, 2001; JACET学習ストラテジー研究会,2005, 2006)。海外では、幼稚園から大学に至るまで多様な学習者に対して、学習ストラテジーが指導され効果を上げている (例:Oxford, 1996; Chamot et al, 1999)。一方、日本においても近年、学習ストラテジーを扱った研究は数多く行われてきたが、小学校の英語活動を対象とした実践や研究は、これまでほと んど報告されていない。

小学生は学習ストラテジーに対してどのような知識・認識を持ち、英語活動において実際にどのような学習ストラテジーを使っているのだろ うか。また、 小学校の英語活動において学習ストラテジーの指導を取り入れた指導は実践可能なのだろうか。本発表では、このような視点に立ち、学習ストラテジー指導を取 り入れた公立小学校とそのような活動を取り入れていない公立小学校の5・6年生を比較した以下の調査・研究について報告する。

(1)    英語活動における動機付けや学習ストラテジーの使用に関する質問紙調査
(2)    学習ストラテジー指導を取り入れたパイロット授業実践の効果


(1)に関しては、東京都三鷹市内の公立小学校5・6年生(162名)と京都市内の公立小学校5・6年生(110名)を対象に、英語学習に対する動機付け(5項目)と学習ストラテジー使用(13項目)からなる質問紙調査を行い、2校の結果を比較・分析した。

(2)に関しては、この2校のうち京都市内の公立小学校6年生を対象に行った学習ストラテジー指導を取り入れた10回の授業実践がもたらした効果について考察した。

自由研究発表  第2日  会場2(F102) ① 9:25~9:55

初級日本人英語学習者の英語読解不安についての基礎的研究
種村 俊介(沼津工業高等専門学校)

動機づけや態度等、外国語学習における学習者の情意要因についての研究が、近年、盛んに行われている。その情意要因の中で、特に「不 安」は1970 年代以降徐々に研究が進み、注目されてきている (Chastain, 1975; Kleinmann, 1977; Young, 1986; Horwitz et al, 1986)。外国語学習における不安の研究は、口語活動の分野を中心になされてきたが、Tobias (1986)やHilleson(1996)では、口語活動以外の分野においても、不安の研究が必要であることが示唆された。Saito et al (1999)は、外国語学習の読解と不安の関係を調査するために、Foreign Language Reading Anxiety Scale (FLRAS)を作成し、外国語学習において、読解活動も不安を引き起こす要因になり得ること等を実証した。日本人を被験者に、FLRASを用いて読解不 安を調査した先行研究にYoshida (2001)とIwaki (2004)がある。しかしながら、日本人の初級英語学習者を対象にした読解不安の調査研究は未だになされていない。

そこで本研究では、FLRASにより、日本人初級英語学習者の英語読解不安について、その実態を把握することを主な目的とする調査を 行った。本発表では、調査の結果報告を行なう。

自由研究発表  第2日  会場2(F102) ② 10:00~10:30

A Comparative Study on the Use of English Reading Strategies between Chinese and Japanese Senior High School Students
王 黎(富山大学(院))

As we know, reading is the foundation of all knowledge. Whether in reading textbooks or extracurricular materials, readers can be exposed to many new words and phrases, and through the reading experiences, can also develop their productive language skills like speaking or writing. Clearly, good English reading abilities can be beneficial for effectively obtaining the information that is necessary for students and professionals. Strengthening English reading abilities is a necessary step in promoting the ability of individual students to compete in the examination system or job market. Many researchers and teachers have tried hard to find ways to help students read successfully in English, but there are many factors that affect reading proficiency. One of the most important factors is learning strategy. Previous studies have demonstrated that reading performance relates to the use of reading strategies, and that the reading strategies used by efficient and inefficient learners are different (Block, 1986; Singhal, 2001). I chose two groups of high school students, Chinese and Japanese, to examine the relations between learning strategies and their English proficiency. The methods I used are the course of study comparison, textbook comparison, vocabulary size comparison, and think-aloud.

The major findings of this study are as follows. Firstly, there seems to be almost no difference between Chinese and Japanese Course of Study in English reading. Secondly, the reading strategies used by Chinese and Japanese students are different.

The following parts may have something to do with the students' choice of reading strategies. Firstly, the types of the textbooks. It may be the case that the larger the amount of reading materials is, the more frequently the students may use the guessing strategy; Secondly, students' vocabulary size. It also may be the case that the larger the vocabulary size is, the more frequently and easily the students may use the guessing strategy.

自由研究発表  第2日  会場2(F102) ③ 10:35~11:05

読解の熟達者とは何か
森 暢子(愛知工業大学)

読解力を高め熟達した読み手になるためにはどうしたらいいか。それにはまず読解の過程を知る必要がある。スキーマ理論によれば、読解は 読み手の背景 的知識とテキストから得られる情報の相互作用を意味する、とある。文学作品を読む場合も、読み手が積極的な推論によってテキストの情報と自らの既有知識を 統合させ能動的に解釈を作り上げる、とある。読解力を高め熟達した読み手になるためには深く読むことが出来なければならない。文学作品の場合深く読むと は、テキスト中に細かく明示された情報ばかりでなくいわゆる行間という空白もまた何かが欠落し隠されているという情報として役立てて読むことである。この ような読解の過程に必要なストラテジーは、文脈からの単語の推測、同族語の認識、概要把握、情報検索、目的読み、予測、一般常識の活性化、推測、資料の読 みとり、概要や要点の把握、である。また、科学に関する読み物やメディアのニュースを読む場合は批判的読解も必要になってくる。情報の真偽性、妥当性、適 合性を一定の基準に基づいて判断し評価しながら読むのである。従って、読みものの種類によっては批判や評価といったストラテジーも必要となる。読解能力の 熟達とは、文学作品の場合、作品の細部まで気を配ると同時に関連する自分の知識も上手に利用して解釈を構成し、さらに解釈と知識の両方を吟味し直せる余裕 ももち得るようになっていくことである。科学の読み物の場合、これに批判や評価のストラテジーを追加して吟味する。熟達者はテキストをきっかけにして新し い意味の生成に向かって自分の知識を動員できるのである。熟達者になればその読解能力が人間形成にも役立つので、その役割は重要である。生徒や学生を読解 の熟達者にするためにはどう指導したらいいか考えるには、まず読解の過程やストラテジーを知ることが必要なのである。

自由研究発表  第2日  会場2(F102) ④ 11:10~11:40

日本人によるコミュニケーションストラテジー使用の特徴について
中田 弘(魚津市立東部中学校)

本発表は、海外で学ぶ日本人にとってコミュニケーションストラテジーの有用性及びそれらがどのように指導されているかを、質的リサーチ の手法を用い て調査したものである。データの収集は、メルボルンにある英語学校のESL教師の中から日本人を指導したことのある4人(2人のネイティブスピーカー、2 人のノンネイティブスピーカー)にインタビューを依頼し収集した。

データ分析の結果、①コミュニケーションストラテジーの複雑性、コミュニケーションストラテジーを運用するにはある程度の文法・語彙の 知識が必要で あること。②コミュニケーションストラテジーの機能の一つとして、ネイティブスピーカーとのコミュニケーションを円滑にする可能性があること。③日本人の 英語によるスピーキングの特徴として、基礎的な英語力はあるものの、スピーキングの機会が少ないことが縮小方略の利用につながってしまいがちになること、 などが示唆された。

本発表では、これらの分析結果の紹介とともに指導者にとって必要なことなどを考察したい。

自由研究発表  第2日  会場3(F103) ① 9:25~9:55

リーディング授業における10分間速読指導
高木 亜希子(大阪教育大学)

本発表は、大学1、2年生を対象とし、3クラスのリーディング授業において行った1年間の速読指導の実践報告である。学習者が真の読解 力を身につけ るためには、正確さを求める精読指導だけでなく、一定の時間で英文を処理できるよう速読指導を行い、正確さと速さがバランスよく身につくように配慮した読 解指導を行うことが望ましい。速読指導の効果については、いくつかの実践報告がなされているが、多くの研究が、時間制限を意識させた指導が速読能力を伸ば し、読解能力も向上させる効果があったと報告している(山内1985, 藤枝1986, 藤田1999, 高木2002)。

筆者の授業では、各自のレベルを考慮し、個人の学力に応じて速読を伸ばすことをねらいとし、SRA教材を用いて、毎時間、授業の初めに 10分程度の 速読指導を行った。SRAリーディングラボ(SRA Reading Laboratories)は、アメリカで開発され、幼児から一般成人を対象に、世界中の学習者によって使用されているリーディング教材で、Power Builders とRate Buildersで構成されている。Rate Buildersは速読力養成をねらいとし、授業時間内にクラス全員が一斉に時間を計って取り組む教材で、各自の学力に応じてレベルを向上することができ る。初回の授業でテストを行い、各自の学力に合わせて、最初の教材のレベルを決定し、毎回2種類の英文(各3分)を読んで、問題を解いた。学生は、毎回正 答率を記録し、同レベルの教材で、正答率80%以上が4回続いた場合、次のレベルの教材に進んだ。

一年間授業を行ったところ、速読指導前後の速読指数の計測、各学生の速読の記録、速読指導後のアンケート調査結果から、速読指導は効果 を上げ、学生 は概ね速読指導に肯定的な態度を示していることが明らかになった。本発表では、授業の進め方と上記の調査結果について報告する。

自由研究発表  第2日  会場3(F103) ② 10:00~10:30

多読指導の実践と効果
飯野 厚(清泉女学院短期大学)

【実践の背景】学内共同研究の英語教育プログラムとして、必修科目「英会話」および「英語演習」において短期大学1年生を対象にカリ キュラム連動型の多読指導を推進した。

【目標】年間20冊を読み、読みのfluencyを高める。

【実践方法】英会話と共同で授業内の時間を割いて実施した。学生たちは少なくとも週に2回授業時間内において英語の本を開けて読む時間 を与えられ た。まず、4 月当初に本の選び方や書棚の位置などを指導するため、英語学習ガイドで図示した図書館の見取り図を参照しながら、1コマを使って図書館で授業を行った。そ の後、「英語演習」と「英会話」のどちらのクラスにおいても10分間の持続的黙読時間が確保された。多読は通常の英語学習と並行して行われた。英会話で は、学生が読んでいる本の内容を口頭で報告する課題を定期的に実施した。英語演習では、簡便な日々の読書記録と1冊読み終えた時点でのBook Reportを書く課題が課せられた。学生は前期に8冊、夏休みに中に2冊、後期に10冊を読むよう促された。日々の読書記録としてReading Recordの記録が求められた。授業時間以外の時間も自主的に読むことが推奨され、1冊読み終わった時点でBook Report(あらすじのまとめと感想:英語使用推奨)を完成し提出することが求められた。

【データ収集と分析方法】Book reportを基本として読み終えた本の冊数、およびClozeテストを利用した。EPERプログラムで使用されているテストをそのまま利用した。4月に プリテスト、1月にポストテストを実施した。プリテストとポストテストは同一のテストであった。テスト間の期間が10ヶ月あり、且つ問題数(cloze) 数が相当多かったので、再テストによる効果はあまり高くないと判断した。1月のテスト時に、5件法による多読に関する質問紙を実施した。

Clozeテストの結果はt検定によって平均値の差の有意性を検証した。質問紙に関しては結果を記述統計でまとめ、実践を振り返るもと とした。

自由研究発表  第2日  会場3(F103) ③ 10:35~11:05

英語多読が学生に及ぼす影響-意識・態度の変化
竹田 真紀子(金沢工業大学)

本研究の目的は大学における多読指導が学生の英語学習やリーディングに対する意識や態度にどのような影響を与えるのかを調査することに ある。多読は 現在注目されている学習法だが、大学において大規模(約2000名)に取り入れた結果、どう学生の意識に変化をもたらしているか報告された例はまだ少な い。

中部地区私立総合大学全学共通教育英語科目の全クラス(5学部9学科)において2007年度からカリキュラムの一貫として多読プログラ ムが導入され た。1 年生4クラス(N=103)に対して2007年12月にアンケート調査を行った。その結果80名(77.7%)の学生が多読プログラムは自分達の英語力向 上に役立ったと答えた。役立ったと答えた学生(N=80)にさらに具体的な効果について自由回答形式で答えさせたところ、「速く読めるようになった」と言 う意見が一番多く(36.3%)、次いで「英語を読むことに抵抗感が少なくなった」というものが22.5%あった。 多読への態度・能力の変化に関する質問については全9項目で、積極的変化が見られた。具体的には、「自分に適した、読みたいリーディング教材の見つけ方を 知っている」、「学校の授業以外で英語を読む」、「英語でのリーディングは楽しい」が特に顕著に多読学習前後で増えた項目であった。 多読に否定的な意見を持っている学生の意見を詳しく見てみると、多読レポートのあり方や多読図書の種類が少ないことに不満を持っていることがわかった。多 読そのものに対する不満ではなく、環境や方法に対する批判がアンケートに現われたと思われる。

全般的に言えば英語学習に必ずしも積極的とは言えない大学生の多くが多読の効果を認め、英語に興味を持つきっかけになったことがこの調 査からうかが える。学習者自身が意識している項目を今後の指導の際に多読の効用として訴えることでその効果をさらに感じてもらえるようにしたい。

自由研究発表  第2日  会場3(F103) ④ 11:10~11:40

自律的英文多読の継続を支える要因:100万語達成者へのアンケート分析をもとに
深田 桃代(豊田工業高等専門学校)

酒井邦秀によって提唱された「100万語多読」は、非常に易しい英文から読み始め100万語を超える大量の英文を吸収する点に、従来の 英語教育にお ける精読中心の授業のインプットを補う授業外の学習活動として位置づけられる多読とは大きく異なる特徴がある。「100万語多読」は、酒井邦秀著『快読 100万語!ペーパーバックへの道』(ちくま文芸文庫)が出版された2002年頃から社会人を中心に実践者が増え始め、2004年には雑誌『英語教育2月 号』で多読特集が組まれたことによって広く英語教育関係者に知られるところとなり、小、中、高校、大学から塾に至るまであらゆるレベルで多読による英語学 習への取り組みが始まった。この多様な教育現場から「100万語多読」によって多くの英語を苦手とする学習者の学習意欲や英語力向上に顕著な成果が認めら れる事例が報告され、同年日本多読学会が設立されて現在に至っている。

発表者の所属する豊田工業高等専門学校では、長年卒業生の弱点とされていた英語運用能力の向上をめざす英語教育改善の一環として、 2003年より 「100万語多読」を導入した。学内プロジェクト経費等で多読用英文図書(2008年5月現在約1万3000冊)を図書館に備え、授業内外で多読活動を推 進してきた。特に電気・電子システム工学科では各学科共通の一般科目としての英語に加え、専門科目の中に英文多読を行う授業科目を設けて目に見えた成果を あげつつある(西澤・吉岡・伊藤:2006)。本発表では、多読指導を開始して以来現在までの100万語達成者を対象に行ったアンケート(自由記述式)の 質的データ分析の結果を報告し、100万語達成を実現する自律的英文多読活動を支える要因を探求する。(本研究は平成19年度科学研究費補助金基盤研究 (C)課題番号19520540の助成によって行われた。)

自由研究発表  第2日  会場4(F104) ① 9:25~9:55

ポッドキャスティングを利用する英語教育のグローバル化―ケーススタディ
吉村 紀子(静岡県立大学)・武田 修一(静岡県立大学)・坪本 篤朗(静岡県立大学)・寺尾 康(静岡県立大学)・澤崎 宏一(静岡県立大学)・近藤 隆子(静岡県立大学)・鈴木 淑乃(静岡県立大学)

本研究は、大学生の間で人気の携帯プレーヤーを学習ツールとして使用し、よりダイナミックに言語教育のグローバル化を図りつつ、英語力 の向上を目指 そうとする試みである。今回の発表では、大学生を対象に2008年春季休暇中(7週間)に実施した「ポッドキャストリスニングプロジェクト」の実験結果に 基づき、スキャンリスニングが英語力養成に与える効果について報告する。

被験者は大学生43名で、事前説明会にて、英語ニュースを毎日1時間以上聞き、何をどのくらい聴いたかを週間レポートにまとめ、提出す るよう指示さ れた。また、本実験の最大の特徴が「携帯プレーヤーに番組をダウンロードしておけば、いつでも、どこでも、'オンデマンド' に、映像を見ながら英語を学習できる点」にあることを強調し、出来るだけ多量に視聴するよう指導した。被験者には、次の2点―(1)このようなe-ラーニ ングが英語力向上に役立つか否か、(2)効果がある場合、どのスキルにおいて、どの程度の向上が期待できるのか―を実証的に検証するため、実験の開始時と 終了時にTOEIC-IPを課した。2回のTOEICスコアを比較分析した結果、以下のことが分かった。第一に、英語習熟度別の場合、上級レベル (TOEIC730点以上)と中級レベル(470点~729点)ではリスニング、リーディング共に、向上が見られなかった一方、初級レベル(467点以 下)ではリーディングにおいて顕著な伸び(32点)が見られた。第二に、視聴時間別の場合、一日1時間以下の視聴では向上が見られなかったのに対し、一日 1時間以上視聴した被験者の間にはリスニング力が13.3点、リーディング力が35.8点とそれぞれ向上が観察された。

これらの結果から、一定の時間量を確保すれば、スキャンリスニングが英語力向上に、特にリーディング力の向上に役立つことが分かった。 ここで炙り出 された興味深い点―なぜリスニング実験がリーディング力強化に顕著な効果があったのか―に考察の焦点を絞り、議論を進めて行くことにする。

自由研究発表  第2日  会場4(F104) ② 10:00~10:30

Moodleを利用した工業英語問題の作成と効果の検証
塩谷 三德(沼津工業高等専門学校)

平成18年度より、オープンソースの学習管理システム(Learning Management System)であるMoodle(ムードル)を利用し、学内限定のe-Learning教材を作成し始めた。Moodleを使用しているのは、フリーで ありライセンスコストは不要であるという利点の他に、次のような問題作成機能を備えているからである。

Moodleの小テスト・モジュールは、柔軟性が高く、穴埋め問題、作文問題、多肢選択問題、組合せ問題などの複数の形式の問題を作成 することが可 能である。蓄積された問題からランダムに生成された小テストを作ることもできる。加えて、同一の出題範囲で、問題の順序を変えたり、学生一人一人に違う問 題を出題することが可能であり、多肢選択問題の場合には、選択肢の順番も変更したりすることが可能である。つまり、学習者が、繰り返し学習する過程で、答 の順番や答の番号を覚えてしまうことを防ぐことができる。さらに、途中で終了しても、後から続きを再開することができるので、時間があるときに学習を継続 していくことが可能である。

また、 Moodleの管理者(教師)は、小テストを設計し設置する時に、学生が繰り返しある問題を受験できるようにしたり、小テストを複数回受験することができ るようにしたり、コンピューターにすべて採点させたりすることができる。また、受験結果は毎回自動的に評定され、教師はフィードバックや正答を与えるかど うか選ぶことができる。

今回の発表では、昨年度から運用している「工業英検」の過去問題や例文を教材とした小テストのコースについてその概要と効果について報 告する。な お、作成した教材は、「日本工業英語協会」から発行されている問題集やハンドブックの内容を利用したものであり、「日本工業英語協会」から、「学内限定」 という条件で使用許可を得ている。

自由研究発表  第2日  会場4(F104) ③ 10:35~11:05

英作文自動添削システムの有効性に関する実践研究
杉田 由仁(山梨県立大学)

本実践報告では、和文英訳をインターネットで自動添削する教材システム(CASEC-G Tutoring System: CASEC-GTS)の活用が、日本人大学生英語学習者の英作文の能力、特に適切な語法・文法を用いて正しい英文を組み立てる能力を向上させる上で効果が あるかどうかについて検証を試みた。大学生英語学習者100名を対象とした英語ライティングの授業で、英作文自動添削システムによる和文英訳の個別学習に 取り組ませ、事前と事後にパフォーマンス方式英文法能力判定テスト(CASEC-G)を実施した。その結果、事前・事後テストにおける6段階評定の平均値 には統計学的な有意差が認められ、今回の調査対象者はCASEC-GTSによる2回の個別学習により、英語力の違いに関係なく、ライティングの基礎力を伸 長させたことが分かった。また、事後アンケートの結果からは、特に中位群の学習者がCASEC-GTSによる個別学習に「面白さ」を感じ、今後の継続的使 用を望む傾向があること、CASEC-GTSによる英語学習の効果に期待する学習者は下位群に多いことなどが明らかになった。

自由研究発表  第2日  会場4(F104) ④ 11:10~11:40

Using Wiki Pages to Unlock Students Communicative Abilities
Quinn, Kelly(名古屋工業大学)

Wiki pages are web pages that can be edited by anyone or any member of a group. The most famous Wiki web site is Wikipedia, an online encyclopedia where members of the Wiki community collaborate to create encyclopedia entries that are accurate and updated in real time. This presentation will discuss the use of a Wiki page project in a communicative English class. The presentation will explain the background of Wiki pages in ESL, the motivation for the project and the free resources exist online for educators to help with Wiki projects. The class where this project took place was a once a week elective English class. Students discussed a variety of topics of general interest such as music, sports, and food. Students were placed in groups and assigned a topic for which they had to create an original web page. One of the key points of creating Wiki pages is the use of groups. Groups are not only necessary for the collaborative ideals of the Wiki philosophy, but they also provide important support and safety nets for students which in turn act to create positive peer pressure toward fulfilling the communicative goals of the project. The presentation will explain how groups were created, the different roles each group member was assigned and how groups and individuals were evaluated.

自由研究発表  第2日  会場5(F205) ① 9:25~9:55

Presentation Projects-Personalizing the material
Howrey, John(南山大学)

When students finish a unit in their textbook, there is often a test to assess whether students have learned the contents. However, these tests frequently cover only vocabulary or grammar and do not communicate ideas that are truly meaningful to the students. The tests are certainly not a chance for the students to present their own ideas and rarely do they integrate the four skills (reading, writing, speaking and listening). Moreover, while tests may encourage students to review what they have learned or what has been presented in the class, seldom do they become a step in the learning process that encourages further language development. The presenter will instead suggest that students do a final presentation project using an index card or poster. The presenter will first discuss the benefits of doing project presentations, and give examples of how the presenter has done presentations with his class using index cards. Ideas will also be given for how to implement presentation projects in large classes (20+ students).

自由研究発表  第2日  会場5(F205) ② 10:00~10:30

Creating a Safe Environment to Practice Speaking
Kirchhoff, Cheryl(長野県短期大学)

Learning to speak English is a cognitive and a social challenge; it requires risk-taking and relationships. Student anxiety, shyness and social relationships can limit students' ability to use English to communicate. If a positive social atmosphere is developed in the classroom, students will be more involved in language use with their peers. Practicing English speaking is important for improving this skill. English classroom environments can be adapted to create safe places to practice speaking.

Teachers can lower anxiety felt by students in a language classroom. Good group dynamics can be planned into a syllabus. Student-centered activities can provide motivation for students to get involved in using English. These adaptations have been proven to significantly affect the learning environment and thus the effectiveness of lessons. This session aims to use teachers' knowledge of building a unified homeroom and apply this knowledge to an English classroom. The session will offer practical ideas and hope of creating better speaking classes.

自由研究発表  第2日  会場5(F205) ③ 10:35~11:05

効果的な発話指導に関する一考察~What is said vs what is implicatedの考え方から~
石渡 雅之(名古屋短期大学)

本発表では、中学校の英語授業において、効果的な発話指導を行うために、どのような考え方が必要となるのか、語用論の理論分析をもとに 提案してい く。具体的には「意図を伝えるために、発話行為においては実際に何が話され、何が話されなくてすむのか」という問題を語用論の様々な分析をもとに考えてい く。この考察により、学習者の(スピーキングによる)コミュニケーション活動を幅広いものにすることを目的とするためである。

近年語用論では意図を伝えるためのコミュニケーション方法としてRelevance Theoryが注目されており、この理論に対するGrice (1989)、Recanati (2004) 、Bach (2004)のそれぞれの考え方をまず紹介する。そして、その上で、日本の中学校における発話指導では学習者のどのような発話を促すべきなのか?という問 いについて、具体的な提案を(教科書の事例に沿って)試みたい。また、一部Deixis研究にもふれ、発話に伴う効果的なDeictic Expressionのあり方も同時に考えてみたい。

自由研究発表  第2日  会場5(F205) ④ 11:10~11:40

アウトプット重視の英語指導法-大学におけるGroup Work Reportingの実践と中高への応用-
巽 徹(岐阜大学)

私たちの母語を用いた日常生活において、テレビやラジオで見たり聞いたりした番組の内容や新聞や雑誌で読んだ面白い記事の内容などを他 の友達や家族 に話すという行為は、日常頻繁に行われているコミュニケーションである。このような日常の生活場面で起こりうるコミュニケーション活動を教室内に持ち込ん だのが、Group Work Reportingである。Group Work Reportingは、「聞いた内容を話して伝える」「聞いた内容を書いてまとめる」活動であり、「話す」「書く」といったアウトプットを重視した指導法 である。この指導法は、①学習者にアウトプットする内容と場面を与える②英語で何とか伝えなければならない状況に学習者を追い込み、英語力を引き伸ばす機 会とする③手の届くところに必要なインプットを用意し、それらを学習者自らが効果的に取り込むようにすることをねらったものである。言いたいことがあるの に英語で言うことができない。以前学習した表現であってもいざ使おうとすると出てこない。このような状況に学習者を意図的に追い込み、必要に応じて、英語 表現に注意して聞いたり読んだりして言語知識の取り込みを促進させることができる。今回対象とした学習者は、大学で英語科の教職課程を履修する学生である が、教材の内容や指導のステップなどを工夫することで中学高校の英語授業にも応用可能であることを示したい。

自由研究発表  第2日  会場6(F206) ① 9:25~9:55

中学校における学び合いの授業の実際
杉本 博昭(伊東市立対島中学校)

中学校において、生徒相互の関わりを重要視する校内研修テーマが多く見られるようになった。それを受けて、英語の授業でも、いかに教師 が分かり易く 教えるか、あるいはいかに生徒にコミュニケーション能力を獲得させるかよりも、授業での「学び」や「学び合い」の成立の有無に注目が集まってきている。本 発表では、「学び合い」、「協同学習」および「グループワーク」をキーワードのして、実践に基づき、この新しい授業方法を分析、考察する。

自由研究発表  第2日  会場6(F206) ② 10:00~10:30

Tips;英語卒業文集をつくるために
岩本 昌明(富山県立盲学校)キャンセル / Cancelled

前任校の生徒らが、英語卒業文集を作った。一昨年に引き続いた取り組みである。英語どころか、そもそも日本語がままならないような生徒 らが、悪戦苦 闘の末、1冊の英語文集を作った。他の学校では体験できない貴重な3年間の思いをなんとか「英語」で残したかった。1冊の文集という形になるまでは、実は その裏に見えない多くの失敗と紆余曲折があった。

①冬休みは「3年間の想い出」という題名で、スピーチ原稿作りの課題。②スピーチ大会後、スピーチ原稿を文集にしよう。③スピーチ原稿 を英語に直そ う。しかし、翻訳ソフトが役立たず、出来上がった英文が意味不明。④ALTのチェックも精神疲労。彼らとのやりとりにも悪戦苦闘。⑤話の流れを意識して清 書をしようとしたが…。⑥写真などのレイアウトを考えて、視覚の助けを借りて。⑦日本語訳例を添えて。⑧ 無事製本をむかえて。

これらの途中過程等を振り返りながら、だれもが英語文集作りに取り組むことが可能になるtipsを紹介したい。なお、日本文が英文にな るまでの、生 徒らの犯した数々の過ちや失敗例を取り上げながら、その対処方・克服方法と考察を添えることで、同様な取り組みを考えている方にも参考になれば幸いであ る。生徒らの特性(提出時期が守れない、パソコン操作能力差、語彙表現力差等)と生徒の「やる気」をいかに醸成し、持続させるか。この取り組みでの「成就 感」や編集裏話についても触れたい。このプロジェクトが今後も引き継がれて、ささやかな「流れ」となっていくことも期待したい。この取り組みを行ってみて 良かったと実感している。

自由研究発表  第2日  会場6(F206) ③ 10:35~11:05

コミュニケーションの基礎となる英文法の教材開発(実践報告) ― 第二言語習得研究からの検証と自動化への試み ―
石神 政幸(岐阜県立長良高等学校・岐阜大学(院))

文法・訳読中心授業からの脱却を目指し、岐阜県立長良高等学校では平成16年度から「『音読指導およびリスニング指導を通して英語の基 礎力を身につ ける』 ―普通の教育環境の、平均的などの学校でも実施できる教育実践を考える―」を目標に、英語授業改革に取り組んでいます。

1年生の授業では音読・リスニング指導に重点をおき、スラッシュリーディングやシャドーイング、サイト・トランスレーション等様々な方 法で音読を行っています。レシテーションコンテストも開催し、有名なスピーチや詩、物語などを、感情を込めて暗誦する活動を行っています。

2年生では、音読指導を継承しながら、リーディング指導(読解力指導)に重点を置き、1年生で培ったリスニング力を基に多読や速読など リーディング力の向上に力を注いでいます。「ライティング」の授業の一環として、スピーチコンテストも行っています。

文法指導に関しては、文法書や問題集を主体とした授業は行わず、教科書の中で文法説明を行い、ALTとのティームティーチングの授業に おいて、カセットテープに会話を録音しながら、アウトプットを意識した文法項目の練習(タスク活動)を行っています。

今回の発表では、まず長良高校での取り組みの概要とその成果を説明し、その取り組みの第二言語習得研究からの検証、意味づけを行ってい きます。その 後、現在使用している独自教材『基礎英語』と開発中の文法教材を紹介し、その中で英文法の指導方法にスポットを当てながら、文法指導の方向性を探ってみた いと考えています。最後に、まだ実験調査中ですが、「文法の自動化」の経過報告をいたします。どのような指導が自動化に有効なのかを考えてみようと思いま す。

一高校教師の実践報告ですので、至らない部分は多々あると思います。皆様からの様々な角度からのご指導をいただけると幸いです。英語教 育改善への一歩となるような発表の場にしたいと考えています。

自由研究発表  第2日  会場6(F206) ④ 11:10~11:40

英語Ⅰ・Ⅱの指導方法の考察と実践
谷口 雅英(岐阜県立揖斐高校)

筆者の高等学校英語についての教科指導観を述べさせていただく。それは「英語Ⅰ・Ⅱの主教材(読み教材)を活用してバランスの良いコ ミュニケーショ ン活動を行えば、英語Ⅰ・Ⅱ以外の教科は要らない」というものである。具体的に言えば、授業をpre-reading、in-reading、post- readingの3つの視点でデザインし、それぞれの段階で読み以外に、聞く・話す・書く活動をふんだんに入れていくというものである。本発表では、その 具体的な実践例を報告する。

自由研究発表  第2日  会場7(P103) ① 9:25~9:55

ギブスイングリッシュの認知と英語運用能力向上の方策 --- フィンランドなど諸外国の教育事情と日本の現状を比較して見えてきたこと ---
平山 欣孝(三重県立久居高等学校)

日本の英語教育は、「世界で最低レベルである」と言われている。それは、TOEFLの結果を見ても納得できることであり、また、実際に 諸外国の生徒や教師と会い英語で話すたびに確信することである。この惨憺たる状況の原因は何であるかを考察する。

私は、「その最大の原因は、日本の英語教師の英語運用能力の低さである」と考えている。従来、①日本は島国であるから英語を学ぶ意欲が 乏しい、②日 本語は、他の言語と大きく異なる言語なので、外国語を学ぶのは難しい、あるいは、③日本人は完璧主義だから会話は苦手など、様々な理由が挙げられている が、それらは、見当違いではないだろうか。これらの影響が皆無という訳ではないだろうが、英語教師の英語力のほうが大きく影響していると思える。

それを論証するために、フィンランドなど諸外国の英語教師の英語運用能力と日本人英語教師の英語運用能力との比較を試みた。これは、諸 外国の学校を訪問した際などに経験した実感を基にしているが、歴然とした差がある。

日本の学校は、諸外国の学校と比べ、「特異である」と言われている。例えば、日本の学校は、いろいろ抱えすぎているとも言われる。その 結果として、 教師は教科教育に専念できず、教材研究も疎かになっていることに加え、教師自身の英語運用能力も低いように思える。英語は筋肉のようなものであり、毎日使 わないと、弱るものである。日本の英語教師は、英語教育以外に多くの雑用を抱えて多忙であるため、それが足かせとなっている。私は、この足かせは、足を固 定し筋肉を弱めるギブスのような物であると考え、筋力が低下したような不健康な英語を「ギブス・イングリッシュ」と名付けた。そして、「ギブス・イング リッシュ」の視点から教育現場の問題を洗い出し、ロジスティクスの考えも含め、イギリスの教育改革の事例を紹介しながら、日本の英語教育を改善するための 方策を提案する。

自由研究発表  第2日  会場7(P103) ② 10:00~10:30

戦後検定英語教科書に現れた『日本人ヒーロー』についての題材論的一考察
東川 直樹(大阪市立中央高等学校)

Hofstede (2005:2‐5)は文化を心理的プログラミングと捉え、「心のソフトウェア」と呼んでいる。その上でHofstedeは文化の多層性に着目し、表層部 より順に、『シンボル』、『ヒーロー』、『儀礼』を、核心部に『価値観』を定位する文化表出モデルを提案する。

一方、検定英語教科書には多くの「偉人たち」が題材として登場する。『広辞苑(第五版)』によれば、「偉人」とは「偉大な人。すぐれた 人。大人物。」とある。

本発表では、戦後後期中等教育の外国語(英語)科教科書に現れる『日本人ヒーロー』の変遷について、文化教授の観点より題材分析し、質 的考察を行なった結果について報告したい。

自由研究発表  第2日  会場7(P103) ③ 10:35~11:05

学習指導要領の変遷と国際英語教育
宮崎 直哉(掛川市立東中学校)

This study is an investigation of historical changes in English education in Japan. It examines those changes to English education past and present focusing on previous Courses of Study.

First, I demonstrated differences between "English as a Second Language (ESL)" and "English as a Foreign Language (EFL)" and analyzed some distinctive features of foreign language education. Next, I considered differences among "English as an International Language (EIL)", ESL and EFL, considering their characteristics and differences in their treatment of culture. I also examined the relationship between foreign language education and cross-cultural education.

Then, I investigated the "Courses of Study" from 1958 to 1999 from the viewpoint of historical changes in objectives, models and activities. Tracking changes over time in the courses of study made it clear what had been expected of English education. I also examined English teaching journals from 1960 to 2000 because they are helpful for gaining insight into past opinions and thoughts on the Courses of Study. The current trend is that English education aims to be more communicative, but some scholars claim that learning the basics of grammar and culture needs to be emphasized more. I agree that they should be stressed in the next Courses of Study.

自由研究発表  第2日  会場8(P104) ① 9:25~9:55

Researching student attitudes toward English learning in junior college
Thomas, Joel(清泉女学院短期大学) & Muller, Theron (Noah Learning Center)

In this "intrinsic case study" (Stake, 1995) we are interested in understanding how our students, freshmen at a private Catholic women's junior college in Nagano City, feel about studying English, whether students' attitudes differ, and how those attitudes change during their first year of tertiary studies. This research incorporates a longitudinal design, gathering data from first year students over a period of four years, and represents an expansion of Muller and Thomas (2006).

Our research interests are two-fold. The first is concerned with evaluating the potential effectiveness of using the same syllabus for all students, as there are several obstacles to uniform instruction:

The second research interest stems from the common depiction of Japanese students as a homogeneous group, a conclusion often linked to Hofstede (1991). Through the longitudinal aspect of this research, we test whether this depiction is accurate, or whether some of the assumptions of culture based research need to be rethought.

Our research objective is to develop a more complete understanding of our students. Thus this research offers as a model of methodological innovation for teachers interested in better understanding their own contexts. As the body of such research grows, resonance, or similarities between different cases may arise. Any such resonances will be highlighted.

Dornyei, Z. (2001). Teaching and Researching Motivation. Harlow: Longman.
Hofstede, G. (1991) Cultures and Organizations. Berkshire: McGraw-Hill Book Company Europe.
Muller, T. and Thomas, J. (2006) Researching student attitudes toward English: A triangulated methodology. Presentation given at the Shinshu Research Support Group 2006 Mini Colloquium.

自由研究発表  第2日  会場8(P104) ② 10:00~10:30

大学英語教育の現状と課題-中国の場合-
市川 研(中京大学)

中国政府は近年のグローバル化する英語に対応すべく、従来の文法・語彙知識中心授業に偏りがちであった方法を改め、総合英語運用能力を 高められるよ うな新たなトレーニングモデルの構築、英語課程教学(学習指導要領)やテキストの改訂など「国家戦略」に基づく英語教育改革を行っているが、大学英語教育 における実態はあまり報告されていない。近隣の国中国の現状はどのようなものなのであろうか。

今までの中国の教育の特徴はトップダウン式で暗記中心、教員の質もあまり高くなく、教え方も画一的であるとされていた。現在では大学入 学時の基礎学 力要求、文系、理系、教職系、英語専攻などに細かく分かれた「教学大綱」の存在、絶えず政府、学内、学生より厳しい評価の対象とされる大学授業など、大学 の主眼はあくまで「教育」にある、とする「教育政策重視」が随所に見られ、改革解放後より高くなった英語力要求に応えようとする強い姿勢が見られており、 日本の教育とかなり違っている。また、進学率の上昇により民営大(私大)が増加し、その結果、学生の二極分化が起こり、より一層の教育改革が必要になって くるであろう事や、大卒者の増加による就職難などの諸問題もあるが、現在の中国の英語教育は少数精鋭方式で成功していると言えよう。今後、教育部は新たな 時代の人材育成を目指したより実用的な英語能力養成の目標を掲げているが、大きな社会変化が急に起こりうる国であるため、先行きは不明である。とはいえ、 年8%以上の高度経済成長が今後も続くとされ、本年には北京オリンピックも開催される中国は今後も注目に値するであろう。

発表当日は新たな問題点、今後の方向性についても明らかにし、日本の英語教育改革の一助となるような点を考察してみたい。

自由研究発表  第2日  会場8(P104) ③ 10:35~11:05

授業改善につながる授業観察診断シートの考察-FD活動への有効利用を目指して
村上 裕美(関西外国語大学短期大学部)・東郷 多津(京都ノートルダム女子大学)・笹井 悦子(桃山学院大学)

近年、学生の学力低下や大学の活性化のために、よりよい授業実践への意識が高まっている。教員個人の資質や能力の開発・向上のための活 動はもとより、教員の教育実践力を高めるための教授団(組織)としての取り組みが望まれる。

発表者の所属大学では、本格的に組織的なFD活動が始まり、2008年度は前期・後期に各1週間にわたり全授業を開放して教員が相互に 授業を参観す ることになっている。参観者は建設的な感想を授業者に提出することになる。これは教授団(組織)としての機能を視野に入れた極めて積極的に教員の授業力向 上を目指した取り組みであると言える。

しかし、「建設的な感想」という範疇は、参観者の授業の捕らえ方や授業に関する関心のもちかたにより多様である。さらに、書き方や受け 取る側の主観 に影響されるので、参観者の感想が正確に授業者に伝わらない場合もある。参観者と授業者の間の不本意な意思の齟齬を最小限にし、参観者の善意を最大限に伝 え、授業者の意欲や士気を高めるために、適切な客観的評価基準作成が急務である。共通のフォーマットを活用することで、個々の教員による教育改善が集約で き、より大きな効果が期待できよう。

発表者を含む研究グループではすでに、教員が自身の授業改善のために授業を診断するシートを考案し(村上、東郷2006)、その有効性 を研究してい る。このシートは、アクション・リサーチの視点に基本を置いているため、授業者自身の授業改善を対象としている。しかし、FD活動では、参観者が授業者に 対して的確なコメントを伝え、それによって授業者の省察を促し授業改善のために有効に活用できるように十分な客観性をもった評価基準の設定が必要となる。 そこで、本研究では、前期に実施されるFD研究において、参観者が他者の授業を客観的に観察する視点を具体化し、さらに授業者がその評価をもとに授業改善 できる機会となる診断シートの考察を行う。

自由研究発表  第2日  会場8(P104) ④ 11:10~11:40

大学英語教育プログラム改革の道筋
只木 徹(名城大学)

本実践報告は、中部地区の大規模総合私立大学における、全学共通教育としての英語教育プログラム改革の道筋を報告することで大学の英語 教育が抱える 問題に光を当て、その解決のヒントを提示することを目的とする。本学では05年度に各学部主導の教養教育を全学共通教育として再編したが英語教育には多く の課題が残されていた。全学共通教育化にともない各学部バラバラに行われていた英語教育は「全学共通化」されるはずであったが、旧制度時代と変わったのは プレースメントテストによる「習熟度別クラス編成」と外国人教員と日本人教員が同じクラスを週に1度ずつ教える制度だけであった。教える内容、教え方、評 価方法もすべて各教員にまかせられており、それをチェックする機関も教員も存在しないため、可能性としては進級の際、習熟度別でより高いレベルのクラスに 移っても、前の年度と同じ教科書が使われていたり、よりレベルの低い内容が扱われていることがあり得た。何よりも、現行の教育内容や方法の成果を点検して 良い点を伸ばし問題点を改善していくシステムがなかった。いわば「やりっぱなしの英語教育」である。本学では06年度より「試行クラス」を2学科で実施、 統一シラバス(テキスト)・統一評価法を貫き、授業アンケートと学年度末にプレースメントテストと同じ実力テストを実施した。その結果、学生満足度と英語 実力テストの伸張度のすべての項目で試行クラスが旧制度クラスを上回り、07年度から全面的新制度実施となった。専任教員10名、非常勤講師57名を抱 え、6学部10学科を対象としている全学共通教育英語プログラムでは、当初統一化に伴う混乱が見られたが、07年度の結果を見てみると06年度における旧 制度クラスをすべての項目で上回っており、新制度導入の成果が明確になった。しかしなお課題(教員とクラス環境)は残っておりその解決に向けた方向性を発 表の中で示唆したい。

自由研究発表  第2日  会場9(R205) ① 9:25~9:55

日本語の主題化現象が英作文に与える影響
大澤 聡子(鈴鹿医療科学大学)

英作文において様々な日本人的誤りがこれまで指摘されているが、本発表では日英語のある統語的相違が学習者に与える影響について論じ、 誤りを修正する方法を提案する。

日本語には主題化現象があり、助詞の「は」を伴った主題句が文頭に現れる。「は」格の主題句は主語と混同されやすいが、「公園では子供 が遊んでい る。」の例から分かるように、必ずしも主語とは限らない。これに対して英語の文頭要素は述部の意味役割で決定し、述部が要求する意味役割である動作主や経 験者が主語として機能する。こうした統語的相違が学習者の英作文に日本人的誤りを生じさせることは、松井(1979)で指摘されている。

本発表ではこの主題化がどの程度深刻な影響を学習者に与えるのか、短大1年生の英作文を資料として検証する。主題化現象は、文のどの要 素が主題とし て文頭に現れるかにより6つのパターンがあることが野田(1996)によって論じられている。(1)格成分が主題になる文 (2)格成分の連体修飾が主題 になる文 (3)述部名詞の連体修飾部が主題になる文 (4)被修飾名詞が主題になる文 (5)節が主題になる文 (6)破格の主題を持つ文。検証の結 果、短大生の英作文には6パターン全てが見られた。このことは英語の統語構造を十分理解していない学習者にとって、日本語の主題化現象が言語習得に深刻な 影響をもたらすことを示唆する。

このような学習者には文頭要素が日英語では一致しないことを理解させる必要がある。主題句は主節のみで生じ、従属節では生じない特徴を もつ。この特 徴を利用して主語と主題句の違いをテストできる。本発表ではこのテストを用いた例を紹介する。さらに重要なことは、英語の統語構造が述部の意味役割で決定 することを理解させることである。したがって、述部を確認し、その述部から主語を決定するというプロセスを徹底させることが必要であると論じる。

自由研究発表  第2日  会場9(R205) ② 10:00~10:30

日本人EFL学習者における格助詞の影響 ―日英他動詞文を中心に―
髙橋 栄作(弘前大学・高崎経済大学)・河内 健志(東北大学(院))

本発表の目的は、格助詞が日本人EFL学習者に与える影響を分析し、英語の習熟度と格助詞の影響との関係を明らかにすることである。

英語と日本語の動詞補部の格標示を比較すると対応関係は一様ではなく、次の3タイプに分類することができる。①対格が「ヲ」格以外の格 助詞 (「ニ」、「ト」、「カラ」、「ニツイテ」、「ヨリ」など)と対応する、②「自動詞+前置詞」が「ヲ」格と対応する、③対格が「ヲ」格と対応する。

① a. Smoking affects [our health]. b. 喫煙は[私たちの健康に]害を及ぼす
  (cf. *喫煙は 私たちの健康を 害を及ぼす)
② a. Who is knocking [at the door]?
  b. 誰が[ドアを]ノックしているのだろう (cf. 誰がドア (*に / *で) ノックをしているのだろう)
③ a. Soldiers killed [a lot of innocent civilians].
  b. 兵士が[大勢の罪のない市民を]殺した。

このように英語と日本語では格標示に関して、必ずしも対応関係が一致しないことがわかる。

そこで、本研究は日本人大学生122名を対象とし、日本人EFL学習者は特に上記①のタイプで格助詞の影響を受けやすいことを示す。さ らに、CASECのスコアをもとにした英語熟達度と学習者の格助詞の影響を比較し、両者の相関が低いことを示す。

自由研究発表  第2日  会場9(R205) ③ 10:35~11:05

高校生英語学習者による進行形の過剰使用について
松井 正(樟蔭高等学校)

進行形は日本人英語学習者が初期の段階(現行の検定教科書では現在進行形は中学1年)で学習する文法項目で、動作動詞と進行形の共起に 関する基礎的 知識は早期に習得されると考えられている。しかし一方で、その誤用に注目すると、第一言語習得の場合とは異なり第二言語習得では、本来なら進行形を取らな い状態動詞に対して学習者が進行形を過剰使用することが報告されている(Li & Shirai, 2000)。そこで本研究では、状態動詞を始め原則として進行形を作れない動詞(具体的にはThomson & Martinet, 1986参照)と進行形の過剰使用の実態を明らかにすることを目的とする。

被験者は高校1年生105人である。全国模試の得点により上位群、中位群、下位群の3群に分け、進行形が義務化される文の動詞と進行形 を作れない文 の動詞の適切な形を選択肢から選ばせる問題を課した。なお、問題文は現行および旧版の中学校検定教科書の英文を中心に出題した。分析の結果、進行形が答に なる動詞の設問では3群の間に有意な差は見られなかったが、進行形を作れない動詞の設問では有意差が見られた。発表では実際の設問とデータを示しながら、 いかなる英語熟達度の学習者に、どのような種類の動詞に関して、なぜ過剰使用が起こるのかを考察する。

自由研究発表  第2日  会場9(R205) ④ 11:10~11:40

日本人英語学習者における従属節のテンス解釈
奥脇 奈津美(都留文科大学)

本研究では、日本人英語学習者(上級・中級レベル)による従属節内のテンスに関する解釈に注目し、その結果をOkuwaki (2005) で報告されている産出データと比較することで、第二言語学習者のテンスの知識体系を明らかにしようとするものである。

英語の一般動詞に関しては、語基に形態素の"-ed"を付与しすることで過去が表され、日本語の動詞に関しては「ーた」を付与すること で過去と非過 去の区別がなされる。このように、統語的に時間の概念が表されるという点で、英語も日本語もテンスを文法化しているといえる (Comrie 1985)。第二言語習得研究に関して興味深いのは、英語(L2)と日本語(L1)のテンスに関する項目のすべてにおいて同様の文法化がされているわけで はないという点である。従属節におけるテンスの現れ方・解釈の複雑さに関する研究は多く(Enç 1987; Hornstein 1990; Stowell 1995, 1996; Zagona 1995; Mihara 1992; Ogihara 1989)、言語によっても異なる。特に、英語においては時制の一致(sequence of tenses)という現象があり、日本人英語学習者がこれを正しく解釈できるかどうかは実証的な問題である。Okuwaki (2005) では、上級レベル学習者はどのタイプの従属節でも正しくテンスを付与したが、中級レベル学習者の正確性は節のタイプごとに異なり、全体の過去形付与の正確 性も低いことが明らかになった。同時に、このことは、日本人英語学習者においては時制の一致のような複雑なテンス項目は発達的に習得されるということも示 している。本研究は、英語と日本語における補文と関係節のテンスに着目し、日本人英語学習者が従属節内のテンスを正しく解釈できるかを調査する。その結果 を、第一言語の影響、発達過程、解釈データと産出データの違いなどの問題に言及しながら考察する。

自由研究発表  第2日  会場10(R206) ① 9:25~9:55

習熟度別クラス編成による授業は効果があるか?
宮田 学(名古屋市立大学)

勤務校では、外国人教師が担当する「コミュニケーション英語」の授業を習熟度別クラス編成で実施する方針が決まった。1年目にあたる 2007年度は、1つのクラスにおいて試験的に導入して、その成果を測ることにした。

まず、4月に経済学部1年生の2クラスにおいて英語力判定テスト(CASEC)を実施し、その得点に従って実験クラス(1年E組)の学 生たちを上位 群(E1)と下位群(E2)に分けた。比較の対象となる通常クラス(1年H組)では、学生たちを番号順に2つのクラス(H1とH2)に分けた。2人の外国 人教師がそれぞれのクラスを担当し、同じ内容の授業を1年間継続した。1月の授業にて英語力判定テストを再度実施し、得点の変化を測るとともに、習熟度別 クラス編成による授業に関する意識調査を行った。また、得点の増減が著しい学生を対象に個別インタビューを行った。

英語力判定テストの結果、実験クラスで平均点が4月の577.4点から1月の575.9点へとわずかに下がったのに対して、通常クラス では、平均点 が559.6点から585.1点に上昇した。担当教師別に比較すると、実験クラスのE1では平均点が613.5点から604.2点へと下がったものの、 E2では541.3点から544.8点へと若干上がっていた。通常クラスでは、H1とH2のいずれにおいても平均点が上昇していた。個人別に得点の変化を 調べてみると、実験クラスで得点が上がった者17名、下がった者23名、変化のなかった者1名であり、通常クラスでは、上がった者24名、下がった者13 名、変化のなかった者0名であった。

このように、「習熟度別クラス編成による授業は効果があるか?」という問いに対しては、「どちらとも言えない」という答えとなった。本 発表では、今 回の試験的導入の経過と結果をまとめた資料に基づいて報告するとともに、なぜそのような結果となったのかを参会の先生方と一緒に考え、習熟度別クラス編成 にかかわる問題点について意見交換したいと考えている。

自由研究発表  第2日  会場10(R206) ② 10:00~10:30

自律的な学習者育成に向けたシラバスの構築について
柳 善和(名古屋学院大学)

本発表の目的は、自律的な学習者育成に向けた授業の一例を紹介し、大学の英語教育の今後の方向性を議論することである。

いわゆるGood Langaugae Learnersの提起以来、学習方略に関する研究は多く行われてきた。どのような方略を取れば学習の成果が最大限になるのかは大変興味深い問題である。 さらに、そのような研究と並行して、学習者に対して学習方略そのものを教えるテキストもいくつか発行されている。このように直接的に教授する方法も効果が あると考えるが、学習者が学習を進めながらreflectiveに考察をしながら、自分の中で自分の学習方法を客観的に眺める方法を与えることも重要では ないかと思われる。

本発表では発表者の大学でのCALLラボでの授業を紹介し、その中で学習方略を意識したシラバスをどのように構成しているかを示し、学 習者によるフィードバックを分析する。

実際の授業では、NHKラジオ第2放送、及びNHK教育テレビの英語教育番組を週替わりに教材として使用し、英語の技能の向上を目指し ている。教材 の目的や難易度が異なることを、逆に利用して、毎週学生にそれぞれの教材を利用した学習方法を考えさせることで、自分に最適な学習方法は何か、また教材の 利用の方法を客観的に観察する視点を提供しようとしている。このようなシラバスを通じて、学生が英語学習方略についてどのような視点を持っているかを紹介 すると共に、自立した学習者を養成するために必要な授業方法について論じる。

自由研究発表  第2日  会場10(R206) ③ 10:35~11:05

Classroom Factors affecting L2 Communicative Competence
Fraser Osada, Sue(清泉女学院大学)

This paper provides a summary of the analysis of evidence of communicative competence in learner output and related circumstances, as observed in classroom behaviour and participation in English lessons at two Japanese senior high schools under examination in a doctoral research project. The aspect of communicative competence under investigation in this section of the study is student oral contributions in English, which is measurable in terms of quantity, quality and mode.

Data were collected over one academic year, through employment of COLT A (Spada & Frohlich 1995) teaching observation schedules and field notes, during ten observed lessons covering a range of courses under the MEXT English curriculum. 'Oral Communication', reading and grammar classes were included, conducted by Japanese teachers of English (JTEs), and under team-teaching circumstances with assistant language teachers (ALTs). Of the two institutions selected for this case study, one is representative of academic high schools with reputations for success in university entrance examinations, while the other exemplifies a specialist 'International Studies' course.

Aspects of course design, lesson content, staffing and participants in relation to classroom input are examined, along with both affective and external factors influencing learners. From the observed data, comparisons are made between factors of management, participation, dynamics, and L1/L2 use, such as teacher input, student oral contributions, interaction patterns, and off-task behaviour. Interpretations of differences identified are then presented, with conclusions drawn as to why such differences arise, and what their potential effects are on the communicative competence of learners.

Spada, N & Frohlich, M. (1995) COLT Observation Scheme. Communicative Orientation of Language Teaching Observation Scheme Coding Conventions and Applications. Sydney: NCELTR.

自由研究発表  第2日  会場10(R206) ④ 11:10~11:40

Let's do it in English
佐藤 臨太郎(奈良教育大学)

As is mentioned in major second language acquisition theories, it is crucial to be exposed to a great amount of input for language acquisition to occur. We have to give students a large quantity of input, some of which they can absorb, leading them to production. Input has to come first, then intake, and finally output. There is no small degree of controversy about the indispensability of verbal input from teachers. Therefore, do we teachers provide plenty of verbal input for students? Do we have to create all English class? If so, can we? I would answer, "Ideally, yes." However, to make a class "All English"can make us feel hesitant and inadequate, or may not be effective if we insist on the "All"aspect. In the presentation, the need and advantages of an English class conducted mainly in English and the significance of code-switching languages will be discussed. I will also describe how I have created input-rich English classes.

自由研究発表  第2日  会場11(R210) ① 9:25~9:55

Teaching English Light Verbs in Chinese and Japanese Compulsory Education: A Corpus-based Approach
范 然(神戸大学(院))
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The term "light verb" was introduced by Otto Jespersen in 1965. It referred to verbal part of composite nominal predicates like take a shower, have a smoke. According to the suggestion of O'Keefe, McCarthy, & Carter(2007), those verbs can not be taught in isolation, without reference to their collocations. The present study reports on light verbs teaching in Chinese and Japanese compulsory education by building and analyzing four textbook-based corpora. It tries to ascertain whether features of light verbs teaching in China are similar with those in Japan or totally different. The results of this corpus-based study will provide English teachers in both countries with a hint to reconsider the methodology to introduce light verbs in teaching materials and in the curriculum.

自由研究発表  第2日  会場11(R210) ② 10:00~10:30

辞書にみる英語語彙の頻度--- COBUILDとLDOCE・OALDを比較して
松尾 眞志(和歌山市立商業高等学校)

コーパスを利用して編纂された英語辞書の頻度表示の恩恵で、重要な語句を効率的に学習することができるようになってきた。昨年度の発表 では、もとも と British National Corpusを使っていた『Longman Dictionary of Contemporary English』4版(LDOCE)の頻度の高い語と、『Oxford Advanced Learner's Dictionary』7版(OALD)のキーワードを比較し、高頻度語彙の実態に迫ろうとした。今回、同じイギリス系の『Collins COBUILD Advanced Learner's English Dictionary』(COBUILD)の4版と5版の語彙をそれに加える。

COBUILD は、Bank of Englishというコーパスをもとにダイヤモンドの数で頻度を表示している。4版と5版は、ダイヤモンド3個が最高で語彙数は不明である。LDOCE は、4版ではLongman Corpus Networkを使い、話し言葉と書き言葉、それぞれ1,000語ずつ3,000語まで頻度がつく。OALDは、British National CorpusとOxford Corpus Collectionを用い、7版ではじめてOxford 3000という名のキーワードを明示した。ただし選定基準は、頻度の高い語だけでなく、使用範囲の広い語、ネイティブなら当然知っている語を加味してい る。

まず、6億4,500万語という圧倒的な規模を誇るコーパスをもつCOBUILD4版5版の頻度の高い語彙の実態を明らかにする。そし て、 LDOCEの頻度の高い語とOALDのキーワードとの比較を通して、学習者にとって重要な語を浮き彫りにする。これで、辞書における高頻度語彙の実態がよ りいっそう明らかになるものと思われる。

自由研究発表  第2日  会場11(R210) ③ 10:35~11:05

「ビンゴゲーム」を科学する
江口 優治(富山県立富山南高等学校)

語彙習得を、英語学習の困難な理由にあげる生徒は多い。特に、高校生は大学入試に向けて学習すべき語彙数が多く、その数の多さに圧倒さ れ、学習を諦 めてしまう生徒もいる。語彙学習は、生徒個人の努力に期待するところが大である。しかし、生徒がもっと効率よく語彙を習得するためには、教師の指導がもっ と必要である。生徒にとって効果的と思える語彙の学習方法を授業中に取り入れ、あるいは紹介することで生徒の語彙学習への負担は軽減されるはずである。

では、どのような語彙指導が効果的なのか。現状では、授業中における効果的な語彙指導の数は非常に限られている。その中でも、中学校で 授業中に一番 多く実践されている語彙活動は、「ビンゴゲーム」であろう。なぜ「ビンゴ」なのか。実際に授業に取り入れてみると効果はありそうである。しかし、中学生や 高校生に同じように効果があり、あるいはどの生徒にも平等に効果があるのか。そこで、ビンゴゲームが生徒の語彙習得にどのような効果があるのか、筆者が勤 務する高校において、平成19年度の1学期に調査した。対象生徒は、高校2年生の160名。4クラスを2クラス毎に、実験群と統制群にわけ、英語Ⅱとリー ディングの授業の5分間に、2週間(計4回)実施した。また、語彙習得にどれくらい効果があったのかを1・2・4週間後に調査した。本校生徒の英語力は、 進研模試で偏差値55-58くらいである。

この発表では、ビンゴゲームの語彙習得における効果や学習効果について、実験から得られた結果をもとに発表する。

自由研究発表  第2日  会場11(R210) ④ 11:10~11:40

定時制高校における英単語ビンゴの取り組み
河田 浩一(南山大学(院))

発表者の勤務する定時制高等学校では、英語の学力が極端に低く、ごく基本的な単語の意味すら理解できなかったり、発音できない生徒が少 なくない。語 彙力不足は、英文解釈やペアワークによるコミュニケーション活動など、授業中の様々な活動の妨げになる。また単語の意味が分からないことから、やる気をな くしたり、授業に参加できない者も多い。そこで、基本的な語彙力を増やし授業を活性化するために、単語学習の一環としてビンゴ・ゲームを取り入れてみた。 すると、生徒の語彙力や授業に対する反応が著しく改善されるようになった。授業に対してやる気を見せなかった生徒が、ゲーム感覚で積極的に英単語ビンゴに 取り組むようになったり、単語の意味や読みが分かるようになった生徒が、自信を持ち始めるなど、語彙学習以外の授業活動にも良い波及効果が見られるように なったのである。また、語彙テストの結果をみると、事前の教師の予測と実際の生徒の語彙力との間にズレがあることが分かり、学習者の語彙習得過程を考える 上での手掛かりになるのではないかとも思われた。本発表では、昨年度約半年間に渡る定時制高校での実践の経緯と結果を、授業観察とアンケート調査結果を中 心に振り返り報告し、学習者の動機付けに対する影響や効果的な授業活動について皆さんと一緒に考察したい。

ポスターセッション (マリアンホール)
プレゼンテーション 第2日 11:20~12:00  ポスター掲示 第1日 13:10~第2日 14:45

小学校英語教育における文字指導の進め方
高橋 美由紀(愛知教育大学)・柳 善和(名古屋学院大学)・清水 万里子(トライデント外国語専門学校)・米田 尚美(岐阜聖徳学園大学・ワールド外語学院)・柴田 里実(常葉学園大学)

小学校英語教育における文字指導は従来からその是非も含めて議論されている。この根拠としては、いわゆる『手引き』の記述によるとこ ろが大きい。今回新しい学習指導要領が発表されて小学校英語教育が高学年で必修化され、文部科学省による『英語ノート』も発行された。枠組みとしては実施 の体制が整ったと言える。

本発表では、文字指導に焦点を当てて、小学校英語教育でどのように文字を扱うかについて考察したい。

  1. 小学校英語教育が「聞く・話す」の音声面を中心とすることについて異論はそれほどないと考えられる。しかし、その中で文字をどの 程度扱うべきなのかは、議論の余地がある。この点について従来からの議論を整理したい。
  2. 文字指導について、どのようにシラバスの中に組み込まれるべきかを議論したい。例えば『英語ノート』では6年生の最初に集中的に 文字を扱っているが、これ以外の方法についても提示して議論を深めたい。
  3. 中学校英語教育がこれまでの「聞く話す」を中心にしたものから四技能のバランスが取れたものになることを念頭に置き、小学校での 文字指導を、中学校の「読み書き」にどのように連携させていくかを考察する。まず「読むことの指導」について、文字の指導から単語の読みへどのように進め るか、文単位、あるいはまとまった文章としての読みをどの段階から始めるのか、などの問題がある。次に「書くことの指導」について、文字をいつから書かせ るか、将来自己表現として書くことを指導することになるが、小学校英語教育でそこにつながる学習をどのように進めるか、という問題がある。
  4. 文字指導についてはこれまでも優れた活動が紹介されてきているが、本発表でもそのいくつかを紹介したい。特に小学校高学年におけ る指導にこだわらず、小学校低学年からの文字指導、国際理解教育を念頭に置いた文字の導入など多彩は話題を提供したい

第二言語教師教育研究の動向と課題
滝沢 雄一(福島大学)

近年、教師教育において、従来のteacher training だけでなく、teacher development, teacher education, teacher learning という用語がよく使用されるようになってきた。また、教師の専門性が議論される際には、「反省的実践家」という言葉もよく聞かれるようになった。そして、 このような用語における変化だけでなく、教師教育の内容・方法においても、どのような内容をどのように教えるべきか、を扱う教科内容・指導方法の知識の伝 達に加え、reflection を重視したり、teaching portfolioやJournalを利用したりするなど新たな方法が取り入れられようになってきている。

これらの背景として、教師教育研究が、その焦点を、指導方法の効果の検証等から、教師の信念・知識など教師自身へと移すという、枠組み の変化が起こりつ つある。

そこで、本発表では、これまでの第二言語教師教育研究を概観し、その動向と課題を整理する。また、研究の変化に伴って用いられつつある 研究方法について も言及する。